なんとか、かろうじて、どうにかこうにか、ご理解いただけておるのであろうな、と思いつつ、先に進もう。
難しいことでもなんでもなくて、どっかの図書館が乱歩に力を入れようと思ったのであれば、その図書館は乱歩のことを知ろうとしなければならない、ということを、名張市役所のみなさんには、なんとか、かろうじて、どうにかこうにか、ご理解いただけたものと勝手に判断して、サンデー先生の平熱教室を継続する。
ほんと、理解してくれたよね?
さて、月日が流れた。
ミラボー橋の下をセーヌが流れたごとく、新町橋の下を名張川が流れた。
名張市立図書館は、乱歩関連資料を収集します、と思いついただけで、そのあとなにも考えず、ただ機械的に、また事務的に、乱歩の本、くださいな、をくり返していただけであったが、そうこうするうち、丸之内から桜ケ丘へ移転することになった。
新しい図書館には、じゃーん、乱歩コーナーが開設されることになった。
乱歩作品を読もうともせず、乱歩のことを知ろうともせず、乱歩について調べようともせんようななさけない図書館ではあっても、乱歩を利用してうわっつらだけとりつくろい、いっちょまえにかっこつけたい、とは思ったのであろう。
乱歩コーナーだろうがなんだろうが、好きにすりゃいーじゃねーか、というだけの話である。
しかし、さすがというかなんというか、こうなるともう、乱歩がどうこういうレベルの問題ではなく、ほんとにものの道理の問題なわけなんだけど、乱歩コーナーに特別あつらえの展示ケースを設置して、そのひとつに乱歩賞受賞作品の単行本を陳列する、みたいなことをしでかしてしまったわけ。
不肖サンデーにとっては、知ったこっちゃねーや、というだけの話なんだけど、しかし、ほんと、どうしてそんなことがまかり通ってしまうのであろうな。
だれかひとりくらい、疑問をさしはさむ人間がいてもよさそうなものだと思うんだけど、いないのである。
だから、これは名張市立図書館のみならず、名張市役所全体にいえることなんだけど、なんかもう、あほが野放しなわけ。
うすらばかが放し飼いなわけ。
すっとこどっこいがサファリパークなわけ。
ほんと、どっかで歯止めがかかりそうなものなのに、まったくかかんない。
どころか、名張市立図書館の快進撃はまだまだつづいた。
野放しである。
放し飼いである。
サファリパークである。
さーあ、乱歩作品の読書会を開くぞ、と思いついた。
読書会だろうがなんだろうが、好きにすりゃいーじゃねーか、というだけの話ではあったのだが、そうもいってられなかった。
なにしろ、乱歩作品の読書会を開くから講師をやってくれ、と名張市立図書館から依頼されたのは、ほかならぬサンデー先生だったんだからな。
むろん、不肖サンデー、頼むからそんなことにおれをまきこまないでくれ、と速攻でお断りした。
このあたりのことは「名張まちなかブログ」にさんざん記したから、ざっとした流れだけ押さえることにしておくけど、その翌年、またしても依頼を受け、そりゃまあ、乱歩生誕百年なんてのが目睫に迫ってきて、名張市立図書館としても乱歩がらみでなんかやって少しはかっこつけたいんだろうな、とは察しがついたので、じゃあ期間限定で、と講師を引き受けた。
講師ったって、なにしろビジュアル系であり、のみならず知性派でもある。
名張市が天下に誇るビジュアル系知性派講師の誕生、ということにはなったんだけど、いろいろあって、不肖サンデー、とうとう切れてしまった。
ビジュアル系が激怒したわけよ。
知性派が憤怒したわけよ。
なんなんだおまえらは、と名張市立図書館を叱り飛ばした。
乱歩の読書会とかそんなことでお茶を濁してばかりいないで、乱歩関連資料を収集している図書館として、本来やるべきことをちゃんとやれよ、うわっつらのことにばかりかまけてないで、まじめにこつこつ本分を尽くせよ、と怒鳴り倒した。
そうしたら、名張市立図書館が、乱歩にかんしてなにをしたらいいのかわかりません、と泣きついてきた。
まともではない。
尋常ではない。
ありえないことである。
ではここで、「名張まちなかブログ」ではおりにふれて披露してきたのだが、このブログではきょうがお披露目となる正調名張市役所音頭、堂々の熱唱としゃれこもう。
スキャット付きである。
いくら田舎のお役所じゃとて
はあどーしたどしたあ
ずんずびずばーん
ぱっぱやーん
ここまであほではちょいと困る
それからどしたあ
ずんずびずばーん
ぱっぱやーん
ちょいとどころかだいぶ困る
はあもっともだーあもっともだあ
ずんずびずばーん
ぱっぱやーん
ぱっぱやーん
ぱっぱやーん
そんなわけで、ほんとに困ってしまうんだけど、なにしていいかわかんない、なんてのはありえない話である。
乱歩関連資料を収集しているオンリーワンの図書館なんだから、とりあえず考えるべきなのは収集資料の活用である。
そんなこともわからんのか、という話なんだけど、ほんとにわかんないのよ。
なにしろ名張市立図書館にせよ、あるいは名張市役所にせよ、ずんずびずばーんのぱっぱやーん、なのよ。
だから、泣きつかれた時点で、ひととおりアドバイスしておしまいにする、ということも、はっきりいって不可能であった。
つまり、名張市立図書館にたいして、まさしくこの平熱教室で進めてきたとおり、図書館っていったいなにをするところなんだろうね、みたいなところから懇切丁寧に説明し、指導し、ひととおりアドバイスして、わかったね、はいさようなら、ということにしてしまうなんてことは、もちろんその当時、そんなことは考えもしなかったんだけど、いまから思い返しても、そんなことはとても不可能であった。
乱歩関連資料を収集する、と思いついておきながら、乱歩作品を読もうともせず、乱歩のことを知ろうともせず、乱歩について調べようともせんようななさけない図書館に、たとえば、さあ、乱歩作品を読んでみようね、そうしないと話がはじまらないからね、とアドバイスしてやったところで、そもそも読もうとすらせんかったじゃろう。
したがって、かりに不肖サンデーが、収集資料を活用する道はいくらだってあるけれど、その第一歩は目録をつくることだからね、とアドバイスしてみても、はーい、わかりました、ととんとん拍子で話が進む、なんてことはありえないわけな。
つまり、乱歩にかんしてなにかやるとすれば、こちらが一から十まで手がけなければならない。
じつに面倒である。
しかし、名張市立図書館が乱歩にかんして、オンリーワンの図書館としてちゃんとしたことをやんなきゃなんない、というのもまたたしかなことだったから、不肖サンデー、意を決して乱歩資料担当嘱託を拝命し、やるべきことをやったわけ。
図書館としてやるべきこと、ふつうのこと、あたりまえのこと、それをやったわけ。
ということは、名張市立図書館は、当然やるべきことを、全然やってなかった、ということである。
ほんと、どういうことなんだろうね。
せめて、乱歩の本、くださいな、で買った本の簡略な目録くらいつくっとけよ、という話なんだけど、それすらしてなかった。
だからまあ、とりあえず、目録をつくることにして、不肖サンデー、ものぐるいとでも呼ぶべき日々に突入した。
なんかもう、名張市役所のみなさんにはとても想像していただけないと思うけど、それはまさしく、乱歩と名張のために滅私奉公した凄絶なものぐるいの日々であった。
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