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Posted by 中 相作 - 2016.11.06,Sun
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本の話WEB
 平成28・2016年11月1日  文藝春秋

家族全員が猟奇殺人鬼一家で起きた密室殺人 兄を殺された亜李亜は、自ら犯人探しに乗り出す
 「別冊文藝春秋」編集部
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家族全員が猟奇殺人鬼一家で起きた密室殺人 兄を殺された亜李亜は、自ら犯人探しに乗り出す

『QJKJQ』 (佐藤究 著)

聞き手:「別冊文藝春秋」編集部

2016.11.01 07:30

 佐藤究さんは、2004年に群像新人文学賞優秀作を受賞し小説家デビュー。文芸誌を中心に活動していたが、新天地を求め4年ほど前からエンターテインメント小説を書き始めた。そして昨年に続き2度目の応募作「QJKJQ」で今年の江戸川乱歩賞を見事受賞した。

「初応募のときは一次選考の通過に終わりました。でも、面白ければ何でもあり、というエンターテインメント小説の枠組みが楽しかったので、また書きたいと思えたんです」

「面白ければ何でもあり」で書かれたこの作品は、まず設定で読者にゆさぶりをかける。主人公は、殺人鬼の女子高生・市野亜李亜(いちのありあ)だが、彼女だけでなく、父、母、兄も含め全員が猟奇殺人鬼という人殺し一家なのだ。

 ある日、亜李亜は、兄が部屋で惨殺されているのを発見する。しかし、父親に兄の死を知らせた後部屋に戻ってみると、兄の死体は跡形もなく消え失せていた。お互いに秘密を共有する殺人鬼一家であるため、当然警察を頼ることはできない。さらには兄が殺された後、母親もどこかへ消えてしまった。予想外の殺人に巻き込まれて動揺する亜李亜は、父親が犯人ではないかと疑い始める。

 一見、荒唐無稽にも思えるが、丁寧に積み重ねられる日常の描写とストーリーテリングの巧みさが、読者を小説世界に引き込んでいく。そして読後、小説に内包された作者の問題提起に驚かされることになる。

「僕がずっと追いかけているテーマは人間の暴力性です。人間の生の根源には暴力があって、それをうまく制御できていないのが僕らの住んでいる社会なんじゃないかと。どんなに温厚なお母さんでも、自分の子どもが襲われそうになったら応戦する。それがエスカレートすると殺し合いになり、戦争にまで発展することもある。その暴力の形を解き明かし、少しでも生の力に変換するのが小説家の役割だと思うんです。僕にとってミステリーとは、犯人が誰かよりも、なぜ人は人を殺してしまうのかを問うものです。主人公の周りの人をすべて殺人者にすることによって、その問いの答えが見えてくるかもしれない、と考えました」

 兄をめった裂きにした凶器がパン切り包丁だと見当をつけた亜李亜は、公園で鳩殺しを楽しむ〈鳩ポン〉に、パン切り包丁が使われた過去の殺人事件の調査を依頼する。亜李亜は独自に“捜査”を進めていくにつれ、自分の周りに違和感を覚え始める。いつの間にかいなくなった隣の家の奇妙な鳴き声の犬、なぜか閲覧が禁止されている自分の家族の住民票……。不安にさいなまれる亜李亜だったが、ファミレスであるものを目撃することによって、彼女の世界は反転する。

「この世の中は、だまし絵みたいなものだと思うんです。本当は多角的な視点から世界は成り立っているはずなのに、国家とか権力といった、ある一定の角度からしか世の中を見られなくなっている。人が無意識のうちに刷り込まれている認識を、ミステリー小説で変化させられたらいいなあと。人間は自分の思い込みがあまりに鮮やかに裏切られると、最初は戸惑いながらも、最後はなぜか感動するんですね。それは、一つの見方から解放されて、一瞬の自由を手に入れられるからではないでしょうか。僕の小説で読者に自由を獲得してもらえたら嬉しいです」

    ◇    ◇

『QJKJQ』 講談社 本体1500 円+税

佐藤究(さとう・きわむ)

 1977年福岡県生まれ。2004年に佐藤憲胤(のりかず)名義で書いた「サージウスの死神」が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。本作は2度目の江戸川乱歩賞への挑戦で、受賞となる。

掲載別冊文藝春秋  2016年11月号
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