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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.11.25,Mon
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Posted by 中 相作 - 2016.09.11,Sun

 5月に勉誠出版から出た『浅草文芸ハンドブック』を遅ればせながらぱらぱらと眺めていて、こんな本が出ていたことを知りました。

 文藝春秋BOOKS:浅草色つき不良少年団

 作中に乱歩が登場するそうなんですけど、私は全然知りませんでした。

 アマゾンで一円の古書が売られてましたので、さっそくポチした次第ですが、気になるお値段が一桁とはなあ。

 さてこちら、定価未定ながら堂々の五桁価格で世に送られるはずの藍峯舎版『奇譚』。

 『奇譚』を書いた平井太郎青年のちょうど三倍馬齢を重ねてしまっている私としては、原文はCD-ROMでつぶさに知ることができるのだから、百年前の乱歩の著作を現代の読者に違和感なく親しんでもらえるテキストにリメイクしようと考えました。

 ですから、漢字をかなに開き、読点を補い、頻出する英単語は、外来語として定着している plot なんかはプロットとカタカナ表記にし、そうではない deduction あたりは演繹ディダクションなどとルビを活用して原文が英語表記であることを示し、それから原語で記された人名はすべてカタカナに、みたいな改変を加えたわけですが、実際、「ルブラン行文ノ妙ハアレド Doyle ノ wit ナク、Leroux ルブランニ及バズ」といったぐあいの和洋混在が気になる箇所も散見されますので、ここはやはりすっきりさせたい。

 送り仮名の不統一も目につきます。

 「斯ル」と「斯カル」がどちらも使用されていて、これはどちらかに統一する。

 というか、この場合は「かかる」とかなに開きますから、送り仮名の不統一は関係なくなります。

 といったあんばいで、ほかにもいろいろテキストに手を加え、手間も時間もたっぷりかけて、読者にやさしい『奇譚』の本文ができあがったわけですけど、作業を終えて初めて、ああ、自分はなんて傲慢な真似をしていたのだろう、いくら若書きの手製本とはいえ、いくらこちらが三倍もよわいを重ねているからといって、ここまで手を加えるのはやり過ぎだ、天人ともに許さぬ所業じゃ、ということに気がつきました。

 ですから、それまでの方針をすべて放棄し、原文を平仮名表記の現代仮名遣いにして漢字は新字体とする、という単純な作業を一から始める仕儀となりました。

 重ねた苦労がすべて無に帰してしまった悲劇。

 悲哀と絶望。

 あほらしいやらなさけないやら。

 なにが悲しゅうて六十三の春から夏を『奇譚』漬けで過ごさなあかんねん。

 わてほんまによゆわんわ。

 みたいなことを考える余裕すらありませんでしたけど、気がついてみればもう9月も中旬。

 二年前のいまごろはふうふういいながら「伊賀一筆」創刊兼終刊号の編集作業に追われていたわけですが、二年後にまた『奇譚』のお仕事をすることになろうとは、お釈迦さまでもご存じなかったと思います。

 むろん私も存じませんでした。

 とはいえ、まだ索引と解題の原稿が残ってますし、校正にも力を入れなければならんわけですけど、きょうはもう散歩とビールにしよっと。

 ちなみに、来年も乱歩人気は継続しそうな勢いです。


 年内にはこんな催しも。


 しかし、いまから飲んだら「真田丸」のころにはべろべろだろうな。
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