Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2016.09.06,Tue
石川県穴水町の町立図書館がこんなことしでかしたみたいです。
▼中日新聞 CHUNICHI Web:研究者寄贈1878冊を誤廃棄 穴水図書館 「貴重さ理解せず」(2016年9月6日)2ちゃんねるでは3スレ目。
▼ニュース速報+@2ch掲示板:【石川】穴水町立図書館が寄贈図書廃棄 「芥川龍之介全集」の初版本など1800冊あまり★3©2ch.net(2016年9月6日)
名張市立図書館も似たようなもので、慶應義塾大学推理小説同好会OB会などから寄贈していただいた数千冊あるというミステリ関連図書、いつまでも死蔵してるだけじゃだめなんですけど、まあ「伊賀一筆」創刊兼終刊号に記したようなところが名張市の実態で、田舎のお役人というのはほんとになあ。
さて、その「伊賀一筆」創刊兼終刊号に『奇譚』を抄録したときには、本文はカタカナ表記のまま、乱歩の誤記なんかもそのまま掲載して、脚註にそれが誤記であることを記しました。
誤記であることに気づけなかったケースもあって、たとえば乱歩はオースチン・フリーマンのフリーマンをずっと「Fleeman」と書いていたんですけど、じつは「Freeman」が正しい。
ですから本来であれば、本文は「Fleeman」とし、脚註で「Freeman」の誤記であることを示すべきだったのですが、お恥ずかしいことに、また申しわけのないことに、それができませんでした。
誤記の極めつけともいうべきは序文の冒頭で、ポーの「黄金虫」の一節がエピグラフとして掲げられてるんですけど、これが「QUOTED BY POE IN “GOLD BAG”」となってます。
序文でいきなりそんな間違い犯すか? と思っていくら目を凝らしても、やはり「GOLD BAG」です。
天下の「黄金虫」が金袋とかそんな卑猥なものでどうする。
そこで、「伊賀一筆」の脚註はこういたしました。
Gold Bug 「黄金虫」1843年。正しくは「The Gold-Bug」。乱歩は一貫して「Gold Bug」と表記している。ここは「Bag」になっているため「Bug」に訂した。
今度の藍峯舎版では、こうしたスペルミスなんかを改めたテキストにいたしますので、乱歩が「Gold Bug」と書いたところもすべて「The Gold-Bug」にするかというとそうでもなく、作品評の小見出しとして立てられた「Gold Bug」なんかは正規のタイトルにするとしても、それ以外はわりと臨機応変に、つまり乱歩はタイトルを省略して記していることが結構あって、たとえば「The Mystery of Marie Rogêt」なんかあっさり「Marie Rogêt」で済ませたりしてますから、そうした表記に平仄を合わせる意味もあって、正規タイトルの省略形としての「Gold-Bug」もあり、ということにしております。
そんなこんなで相当厳しくチェックして原稿を仕上げたつもりなんですけど、まだ見落としがあって、これは初校で直すことになりますが、ベンジスンをうっかり見過ごしていたことに気がつきました。
ベンジスンは黒岩涙香が「幽霊塔」を発表するに際して使用した架空のペンネームで、乱歩は『奇譚』に英語表記を「Bengison」と綴っています。
しかし、つい先日、小学館の電子版乱歩全集第8巻をダウンロードしてあっちこっち眺めていたとき、「幽霊塔」の自作解説にあるこんな文章が目にとまりました。
涙香本の序文には The Phantom Tower, by Mrs. Bendison(アメリカ作家)と明記してあるけれどもアメリカの探偵小説史、通俗小説史などにはベンディスンという作家はどこにも出ていない。
え? Bengison やのうて Bendison かいな、やっべ、とか思って国立国会図書館の蔵書を調べてみました。
▼NDL-OPAC:幽霊塔 : 奇中奇談
そうすると、Bengison でも Bendison でもなくて Bendisn やおまへんか。
わてほんまによゆわんわ。
私はどこかで、万朝報が「よろず重宝」から来ているのと同様に、ベンジスンは「便宜なんとか」に由来しているのではないか、みたいな説を読んだことがあり、それで「Bengison」という綴りを疑いもなく受け入れてしまったのかもしれません。
乱歩が書いてることを鵜呑みにしちゃだめだから、ということはいつもみずからにいい聞かせているつもりなんですけど、まだこういうミスがあるから困ったものです。
小学館の電子版乱歩全集には深甚なる謝意を捧げる次第ですけど、そういえば先日、電子書籍関係のサイトにこんな記事が掲載されました。
▼ebookjapan:自著を語る【7】 江戸川乱歩『江戸川乱歩 電子全集8 傑作推理小説集 第4集』(2016年9月2日)
こういう記事が出るということは、もしかしたらこの電子版全集、苦戦を強いられているのかもしれません。
まあ、よろしかったらお買い求めください。
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