Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2016.06.23,Thu
朝もはよからカンテラはさげてませんけど、「二銭銅貨」の点字をつくっておりました。
むろん青空文庫でも、点字は図版として掲載されております。▼青空文庫:二銭銅貨
これです。
「二銭銅貨」の初出の点字には誤りがあり、乱歩は昭和36年の桃源社版全集でそれを訂して、「あとがき」にこう記しました。
今度、この小説に使われている点字の書き方に間違いがあることを気づいたので、訂正しておいた。これは最初の私の原稿が間違っていたのである。
青空文庫の「二銭銅貨」、底本関係はこうなっております。
底本:「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」光文社文庫、光文社 2004(平成16)年7月20日初版1刷発行
底本の親本:「江戸川乱歩全集 第一巻」平凡社 1931(昭和6)年6月
昭和6年の平凡社版全集には点字の誤りがそのまま引き継がれていたはずですが、2004年の光文社文庫版全集には昭和36年の桃源社版全集で訂正された点字が使用されていて、これを要するに、テキストは平凡社版、点字は桃源社版、という措置が講じられたものと思われます。
では、誤りがあったという初出の点字はどんなんであったか。
「新青年」大正12年4月号の誌面に準拠し、朝もはよからカンテラはさげずに作成した九十九円電書用点字はこちらとなっております。
ついでですから、乱歩が訂正した桃源社版全集の点字も図版にしてみました。
これどす。
ビフォアとアフターを比較してみますと、ビフォアでは「濁音符」というフレーズが一行で処理されていますが、アフターでは二行になっております。
しかし、そんなことは些細な違いであって、より本質的な違いは、ビフォアにあった拗音符がアフターでは姿を消している、という一事です。
拗音符はどこへ消えたのか。
いやいや、消えてはおりません。
ビフォアの拗音符は、六字名号で表現すれば「弥」一文字。
アフターにも「弥」はちゃんと使用されていて、しかし不思議なことに、「ゴケンチョーショージキドー」の「弥」を拾ってみると、驚くべし、最初の「弥」は「チ」と読まれ、次の「弥」は「シ」と読まれています。
なおかつ、アフターの「ョ」は「無阿弥陀」であったり、「無弥陀仏」であったりしているうえ、「無阿弥陀」は「ウケトレウケトリ」では「ト」と読まれているではありませんか。
なんじゃこれは。
で、いろいろ考えてみた結果、乱歩は点字における拗音符の使用法を間違えていた、ということが判明しました。
ビフォアでは、「ゴケンチョー」の「ョ」が「拗音符+ヨ=ョ」とされておりますけれど、これが誤り。
アフターを見てみると、「拗音符+ト=チョ」と訂正されていて、これが正解です。
点字における拗音符の使用法は、グーグル検索したらトップでヒットしたこのページでどうぞ。
▼haruのデータルーム:点字 3 (日本語の覚え方)
つまりはローマ字感覚で、拗音符にトをつづけると、「to」が「tyo」に拗音化して、それが「チョ」を示す点字である、ということになるみたいです。
ですから、ビフォアにしてもアフターにしても、そもそも最初の「ゴ」の表記からしておかしいわけです。
乱歩は「陀」「無弥仏」を「濁音符」「ゴ」としていますが、これを正確に記すならば、「濁音符」「コ」となります。
「濁音符+コ=ゴ」という寸法です。
要するに乱歩は、拗音符の使用法のほかに、もっと大きな間違いを犯していたことになります。
点字をかなに置き換えるときの表記が間違っていた。
いや、間違いと断定はできないにしても、不適切であったことはたしかだと思われます。
そこで私、「二銭銅貨」の点字を正しい表記に、いやいや、正しいといってしまうのはやはりあれでしょうから、あらまほしき姿に、ということにでもしておきますが、とにかく新たに図版化してみました。
こちらになっております。
この図版もおまけにつけて、気になるお値段はわずかに九十九円。
なんとか出したってもらえまへんか大将。
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