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Posted by 中 相作 - 2016.06.03,Fri
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 平成28・2016年5月31日 エフエム東京

“著作権フリー”江戸川乱歩の超ネガエピソード
 岡本清香
 Home > コラム・雑学 > 記事

“著作権フリー”江戸川乱歩の超ネガエピソード

2016-05-31 (火) 11:00

純文学や昔の小説が好きな人は、「著作権フリー」になった作品を読んでいる人も多いのでは? 基本的に作家の死後50年で著作権保護期間が終了し、著作権フリーに。そして今年、2016年に著作権フリーとなったのが江戸川乱歩です。乱歩の作品がネットなどの無料サービスで読み放題!ということで、今回はそんな江戸川乱歩のお話です。



“著作権フリー”江戸川乱歩の超ネガエピソード

「怪人二十面相」シリーズ。「人間椅子」。
数々の推理小説や幻想小説を生み出した明治生まれの作家、江戸川乱歩。
そのミステリアスな作風は、読む人を中毒にするとも言われています。
そして作品だけでなく、乱歩はその私生活も一風変わっていました。

ひと言で言うと彼の性格は「超・ネガティブ人間」。
学生時代に友達はおらず、いつもひとりで空想をしているような少年でした。
「すべての物の考え方が誰とも一致しなかった」と語っており、あるインタビューでは「生まれ替ったら(変わったら)?」という質問に、「たとえどんなすばらしいものにでも、二度とこの世に生れ替って来るのはごめんです」と答えています。

妄想の力を活かして小説家になった後も、ネガティブ思考は止まりません。
乱歩は自分の作品をつまらないものと思っていて、その出来を恥じて何度も何度も休筆。
私たちがあれだけ夢中になる作品に対し、「われながら少しも面白く感じられないので、私の癖の熱病のような劣等感におそわれる」と感想を残しています。
そしてなんと、ある小説では推理小説の結末が思い浮かばず、誌面で読者に謝ったこともあったのでした。

そんな人間嫌い・ネガティブ全開の乱歩ですが、太平洋戦争を終えると別人のように性格が変わっていきます。
あれだけ人との付き合いを嫌っていたのに、なんと自らの町の町会役員になり、副会長に。
理由は、「自分の町に慣れた」ことと「戦時中にお酒が飲めるようになった」こと。
大学デビューならぬ「アラフィフデビュー」と言えばよいのでしょうか、ともかくネガティブだった乱歩は、人生50年を超えてようやく人とのコミュニケーションを楽しむようになったのです。

その後、乱歩は「少年探偵団」シリーズなど子ども向けの小説を執筆したり、作家の新人発掘などに熱心に取り組みます。
彼に才能を見出された作家は少なくなく、そこにはもう若かりし頃の厭世的で人間嫌いの乱歩はありませんでした。
結果、作品も人柄も大変に愛され、「大乱歩(だいらんぽ)」と呼ばれて尊敬されたのです。

持ち前のネガティブのおかげで大作家になったともいえる江戸川乱歩。
悲観的な性格も、うまく活かせば才能のひとつになるのかもしれませんね。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「ネガティブ作家、江戸川乱歩」として、5月30日に放送しました。
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