ウェスタンミシガン大学准教授、ジェフリー・アングルスさんは乱歩のデビュー作「二銭銅貨」の英訳も手がけていらっしゃって、2008年にホノルルで出版されたこのアンソロジーに収録されています。
▼Amazon.com:Modanizumu: Modernist Fiction from Japan, 1913-1938 [Hardcover]
しかし、えらいことです。いま確認してみたところ、『Modanizumu』のことが「RAMPO Up-To-Date」に記録されていないではありませんか。英語の本であるということに恐れをなして、先送りしているうちについつい忘れてしまったのか。とにかく収録作品をお知らせしておきます。
Part One
Anti-naturalism: Illuminating the Spectacle
美少年サライノの首 村山槐多
星を売る店 稲垣足穂
詩人の靴 尾崎翠
狂った一頁 川端康成
幽鬼の街 伊藤整
Part Two
Cosmopolitarism and Popularization: Foreign Settings, Exotic Personae, and the Bilingual Gloss
酒場ルーレット紛擾記 橘外男
日独対抗競技 阿部知二
二銭銅貨 江戸川乱歩
上海された男 谷譲次
死後の恋 夢野久作
Part Three
Modanizumu as the Multiple Self: Dopplegängers, Alter Egos, and Nonessentialism
檸檬 梶井基次郎
Kの昇天 梶井基次郎
ある崖上の感情 梶井基次郎
RちゃんとSの話 稲垣足穂
押絵と旅する男 江戸川乱歩
Part Four
Modanizumu in Politics: Diving into Actionism
芋虫 江戸川乱歩
検閲官 谷崎潤一郎
華やかな新宿について 吉行エイスケ
鬼子母の愛 岡本かの子
日本三文オペラ 武田麟太郎
釜ヶ崎 武田麟太郎
ダイヴィング 舟橋聖一
猫町 萩原朔太郎
マルスの歌 石川淳
乱歩作品は三作も収録されていて、このアンソロジーを見る限り乱歩こそは本邦のモダニズム文学を代表する作家だということになるわけですが、三作のうちの「二銭銅貨」、つまり「The Two-Sen Copper Coin」がジェフさんによる英訳で、こんな具合に始まります。
"Boy, that thief makes me jealous!"
That was the sort of remark my roommate and I exchanged at the time. That's how desperate we were for money.
「二銭銅貨」を英訳するとなるとあの点字はどう処理されるのか、それが気になるところですが、「Na Mu Da, A Mi Butsu, Na DA Butsu,……」と始まる暗号はこんな英文に姿を変えます。
J U S T T A K E F A K E M O N E Y F R O M S H O J I K I D O C A L L Y O U R S E L F D A I K O K U Y A ! !
でもって、「How about reading only every thirteenth letter in the message?」ということになるわけなのですが、どんな言葉が浮かびあがってくるのか、どうぞお試しください。
Powered by "Samurai Factory"