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Posted by 中 相作 - 2016.03.16,Wed
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平成28・2016年3月10日 blueprint
増村保造、三島由紀夫、『ドラゴンボール』……『マジカル・ガール』監督が語る、日本文化からの影響
宮川翔
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増村保造、三島由紀夫、『ドラゴンボール』……『マジカル・ガール』監督が語る、日本文化からの影響
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増村保造、三島由紀夫、『ドラゴンボール』……『マジカル・ガール』監督が語る、日本文化からの影響
2016.03.10
スペイン映画『マジカル・ガール』が3月12日より公開される。白血病を患った余命わずかな少女アリシアの願いを叶えるため、失業中の父ルイスが、高額なアニメのコスチュームを手に入れようとしたことから、登場人物たちの運命の歯車が狂っていく模様を描いた作品だ。第62回サン・セバスチャン国際映画祭で作品賞と監督賞に輝いた本作を手がけたのは、本作が劇場デビュー作となるスペイン出身の映画監督カルロス・ベルムト。イラストレーター、漫画家としても活動するベルムト監督は、架空の日本のアニメ「魔法少女ユキコ」や、長山洋子の「恋はSA-RA SA-RA」など、作品内で日本からの影響を見受けられるアイテムを多数使用している。リアルサウンド映画部では、本作のPRのために来日したベルムト監督に取材を行い、日本文化からの影響や自身の映画製作のルーツ、撮影にあたり意識したポイントなどについて、話を訊いた。
「影響を受けたのは、アルモドバル、タランティーノ、増村保造など」
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
ーーまず、タイトルから想像していた内容とはまったく異なったストーリーで驚きました。
カルロス・ベルムト監督(以下、ベルムト):最初はフィルム・ノワールを作るつもりで、“脅迫の連鎖”ということだけを考えていたんです。タイトルも別のものでした。ところが、“娘の希望を叶えるために父親が別の人を脅迫する”というストーリーを考えていくうちに、劇中に出てくる『マジカル・ガール』のコスチュームのアイデアが浮かび、それが物語を展開していく上での大きな動力になったので、タイトルもそのまま『マジカル・ガール』になったんです。
ーー監督はマンガ家としても活動されていますが、劇中に出てくるアニメ「魔法少女ユキコ」も監督自身のアイデアですか?
ベルムト:「魔法少女ユキコ」も私が作りました。もともとはひとつのシリーズとしてリアリティが出るように、全部マンガにして紹介しようと思いました。ただ、制作費の問題などがいろいろあったので、内容よりも信じられるものになればいいということで、ポスターと人物だけを作りました。コスチュームは衣装さんに頼んで、日本のアニメに見えるようにお願いして作ってもらって、ポスターは自分でデザインして作りましたね。
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
ーー監督は日本の文化からかなり影響を受けられているそうですが、そのルーツはやはりマンガやアニメにあるのでしょうか?
ベルムト:私が子どもだった頃、アニメやマンガなど日本文化ブームみたいなものがあって、子どもたちは大きく分類すると、アニメ派か武道派かに分かれました。私はアニメにすごく興味があったので、もちろんアニメ派でした。いろいろな作品を見ていく中で、アニメにも多様性があり、一括りにはできないと思い始めるようになったんです。小さい頃に観ていたのは、『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』、『幽遊白書』などでしたが、次第に大人向けのミステリーというか、謎が多いもの、江戸川乱歩や三島由紀夫の作品に触れていくようになりました。
ーーこれまで何回か日本に来たことがあるんですか?
ベルムト:今回が10回目の来日です。一番最初は観光客として来たんですが、それ以降は浅草に行ったりだとか、写真を撮ったりだとか、いわゆる観光っぽいことはせずに、2~3ヶ月ぐらい滞在しながら、日本で日常を過ごしていました。日常を過ごすとは言っても、仕事に行くわけではないので、日本に住んで、作品を書いたり、友達と一緒に過ごしたり、いろんなものを見たり、研究をしたり、いろいろです。それがわかるようになったのは、上を見ながらではなく、下を見ながら歩くようになったことですね。目線が上にいくときは、何か写真を撮るものがあるんじゃないかという感覚ですが、目線が下にいくということは、もう日本の方と同じように日常を過ごしているということですからね(笑)。日本に来るときは新宿ゴールデン街や新宿二丁目、上野の国立科学博物館などによく行きますね。
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
ーーかなりの日本通なんですね(笑)。今回、初の長編監督作ですが、ご自身の映画製作のルーツはどこにあるんでしょうか?
ベルムト:私が影響を受けた監督たちはたくさんいます。同じスペイン人としては、カルロス・サウラ、ルイス・ブニュエル、ペドロ・アルモドバルなどです。国外だと、クエンティン・タランティーノ、ラース・フォン・トリアーから影響を受けています。日本だと、勅使河原宏や増村保造が好きですね。
増村保造、三島由紀夫、『ドラゴンボール』……『マジカル・ガール』監督が語る、日本文化からの影響
「非常に複雑な物語なので、単純な構図にしたかった」
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
ーー今名前が挙がったペドロ・アルモドバル監督は、今回の作品にコメントを寄せていますが、交流はあるんでしょうか?
ベルムト:アルモドバル監督に関しては、映画を観てもらいたくて招待したら、観に来てくれたんです。もともと自分がファンだったこともあり、ドキドキしてなかなか話しかけられなかったのですが、上映後、アルモドバル監督が私のほうに来て、「ちょっとトイレに行ってくる」と言ったんで、「ああ、ダメだったんだな」と思って諦めたんです(笑)。けど、外に出るとアルモドバル監督がいて、「すごく好きだ」って言ってくれて、電話番号をくれたんです。そこから話をしたり会うようになったりしましたね。増村保造や武満徹の映画の話を2人でしたりして、新しい発見などもあり、非常にいい関係が築けています。次の新作はアルモドバル監督に製作してもらうことになりました。
ーーそうなんですね! 日本からの影響でいうと、長山洋子さんの「春はSA-RA SA-RA」が非常に印象的な使われ方をしていますが、この楽曲の使用の経緯はどういう流れだったのでしょうか?
ベルムト:最初、「魔法少女ユキコ」のテーマ曲になるような音楽を探していたんです。そのような経験があるスペインの作曲家や音楽家に頼もうかとか、グループを探そうかとか、いろんなオプションがありました。ただやはり、ここでも予算や製作日程の問題に直面しました。また、スペイン人に頼んで日本っぽい音楽ができても、日本のものでないとリアリティがないと思ったので、ネットで80年代~90年代のアイドルの曲をたくさん調べて聞いて、その中から選びましたね。
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
ーーシーンが移り変わるときの“間”が通常の映画と比べて長かったのが印象的でした。
ベルムト:“間”というコンセプトがとても好きなんです。言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、時間の中にある空間だと私は思っています。それは今も研究し続けているのですが、例えば、ひとつのシーンが終わって次のシーンに移るときというのは、機械的ではなく、物語がそこでどう動くかを最も含める箇所だと思うんです。日本はやっぱり“どう語るか”をすごく詳細に決めるので、その語り方に近いと思います。そういうことを意識して映画を作っている部分もありますが、これだけ日本文化に浸ってきたので、もしかしたら無意識に出ているかもしれませんね。
ーー撮影で意識したことはありますか?
ベルムト:撮影において、まず一番最初に意識したのは、構図です。フレーム内に人がいるという、非常に単純な構図になっています。構図については、私自身常に気にしている部分です。今回は、物語が非常に複雑なので、絵自体は非常に単純な、簡潔なものにしたかったんです。何台もカメラを置いて、いろんなアングルで撮るようなことはしたくなかった。単純な構図でシーンを明確に分かるようにして、あとは物語の複雑性をどのように映像として出すかというところにこだわりました。
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
ーーすべてが描かれずに“謎”のまま残る部分も多くありますね。
ベルムト:今回の作品の場合、脅迫が接点になって人が繋がっていくということなので、その人たちの人生がどう変わるのか、運命がどうなっていくのかという、非常に単純なことが重要だと思うんです。だから、無駄を省きたかったんです。必要のないものは入れないということを、一番最初に決めていました。例えば、ダミアンとバルバラの関係など、この映画の中で描かれないのは、過去のことなんです。これは彼女たち2人だけの映画ではなく、もっといろいろな人たちが絡んだ群像劇でもあります。誰かに偏った映画にはしたくなかったので、平等に描くように心がけ、無駄なことはすべて省きました。バルバラが部屋の中で何をされているのかについても、説明すればするほど恐くなくなってしまうので、謎のまま、皆さんの想像力に任せています。“謎”が一番恐ろしいものだと思いますね。
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『マジカル・ガール』
3月12日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
監督:カルロス・ベルムト
出演:ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ルシア・ポジャン
2014年/スペイン/カラー/127分/シネスコ
配給:ビターズ・エンド
Una produccion de Aqui y Alli Films, Espana. Todos los derechos reservados(c)
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/magicalgirl/
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