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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2016.02.11,Thu

 それでまあ、著作権が切れたんだから、ひとつ乱歩の本でも出してみたら? とひとからいわれたことは一度もないんですけど、出してみたいな、という気はしないでもありません。

 しかし、出版産業はいうまでもなく大凶です。

 とくに地方は厳しい。

 信州の雄、郷土出版社もついにこうなりました。

 信濃毎日新聞:松本市の郷土出版社、閉業へ(2016年2月3日)

 社長の神津良子さん、「出版不況は手の施しようがなく」とコメントしてらっしゃいますけど、これはもうあらゆる手を尽くし、万策を講じた果ての痛切な実感であろうと思われます。

 出版不況は別にしても、そもそもどんな本を出すか、という問題もあります。

 乱歩の小説は現在ただいまあちらこちら、紙でもネットでも出版が相次いでいる状態ですから、少なくとも現時点では、このうえ屋上屋を架す必要はないように思われます。

 小説を除外すると、残るのは随筆評論のたぐいですが、評論にはまったく興味がもてません。

 となると、随筆しかなくなってしまいます。

 随筆、というだけではなんだか茫漠としていますから、括りや縛りを加えることにします。

 ならば、くくったりしばったりするテーマはなにがいいか。

 もちろんさまざまに考えられますが、土地はどうか、と思いつきました。

 私は名張の人間ですから、とりあえず名張という限定を加えて、名張が出てくる乱歩の随筆を一冊にまとめてみてはどうか。

 簡単にできることですが、残念ながら作品数が圧倒的に少ない。

 ですから、範囲をひろげてみました。

 名張→伊賀→伊賀・伊勢→三重→東海。

 東海がいいのではないか。

 五畿七道の東海道だと伊賀から常陸まで行っちゃいますけど、いま東海地方というと、愛知、岐阜、三重で東海三県、静岡が加われば東海四県。

 乱歩が書いた東海四県ゆかりの随筆、という括りないし縛りを採用してみると、ご先祖さまの土地だった伊豆国も入ってきますし、祖父の代まで侍として勤務した津、父親が勤め乱歩が生まれた名張、旧制中学を卒業するまで過ごした名古屋、サラリーマン生活を送り結婚相手と出会った鳥羽、といったあたりがカバーできますから、なかなか面白いのではないかしら。

 とはいえ、随筆をただ並べるだけでは妙味に欠けますから、時間軸に添って作品を、それもときに細切れにして連ねていってはどうか。

 たとえば昭和5年の「一頁自伝」など、ばらばらのフラグメントに分解して、幼年期、少年期、青年期のそれぞれに配してゆけばいいのではないか。

 乱歩は随筆八十篇を集めた『わが夢と真実』をモンタージュによる一冊だと称していますが、当方の手法はさらにさらに細かく、さしずめCTスキャンだということになるでしょうか。

 で、あれは昨年のいつであったか、この「まけないぴろたんへこへこまがじん」第一号を試作したあとのことでした。



 「まけないぴろたんへこへこまがじん」とまったくおなじサイズで、乱歩による東海ゆかりの随筆集の版面を設計してみたんですけど、最初に来るのはこの作品、ということにいたしました。


 紙の本にするのは最初からあきらめていたのか、ノドと小口が同寸の設計になってますけど、PDFなら問題はありません。

 たとえば名張市または名張市立図書館のサイトにこういったPDFが掲載されていてもまったく問題はなく、というか、乱歩を利用して名張市をPRする絶好の素材ではあり、それを読んでくれたひとが、よーし、名張市にふるさと納税しちゃうぞ、みたいな気になってくれないとも限らないわけですけど、名張市のお役人にそんなことを期待するのは無理、というか、酷というものです。
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