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平成23・2011年5月10日 報知新聞社
あの日のカバー絵とともに、明智小五郎や怪人二十面相が復活!…ポプラ社「少年探偵シリーズ」
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あの日のカバー絵とともに、明智小五郎や怪人二十面相が復活!…ポプラ社「少年探偵シリーズ」
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少年探偵シリーズ「怪人二十面相」
怪人二十面相の暗躍と小林少年の活躍を描いたポプラ社文庫クラシック「江戸川乱歩・少年探偵シリーズ」(全26巻)が、30~40代を中心に注目を集めている。子どもの頃に読みふけった、あのシリーズが、少し不気味で懐かしいカバー絵もそのままに完全復刻。“昭和テイスト”あふれる企画に携わった担当者に裏話を聞いた。一方、児童書でなじみの同社は、大震災避難所の子どもたちに、作家が絵本などを読み聞かせ、寄贈する活動を10日から始める。
青銅の魔人、電人M、夜光人間、サーカスの怪人…。題名を聞くだけでゾクゾクする年代の“大人”は多いはず。おどろおどろしくも、心引かれた独特の表紙絵とともに、二十面相と小林くんの物語が復活した。企画を進めた文庫編集部の吉川健二郎編集長(36)は「みなさんが覚えてらっしゃるのは、あの表紙絵だろうから、そのまま復刻するのが面白いと考えました」と振り返る。
今の大人が読んだ大判のオリジナルは、1964年に刊行され、99年ごろまで刷りを重ねた。現在は絵柄や表現を“今風”に変えたシリーズを刊行中。同社では、3年前に大人向け文庫を立ち上げており、当時公開された二十面相映画との連動などで、今回の復刻企画が持ち上がった。
特徴的な表紙絵は、柳瀬茂画伯が中心に手がけた。復刻に当たり「原画は保存されていなかったので、苦労しました」という。結局、社内の「保存状態がよくキレイな本」から、挿絵も含め、スキャニングしてデータに取り込むという“現物コピー”で対処した。表題外側の四角い枠部分もそのままコピー。つまり、枠で隠れた部分の原画に何が描かれていたかは、「今となっては永遠の謎ですね」(吉川編集長)。
オリジナルも、文章は刷りを重ねるうちに何度も直しが入った。だが「やるなら、最初のものをそのまま復刻しないと意味がない」とこだわり、社内に初版本がないものは、国会図書館で探し、著作権者の許可を得て、文章をコピーしてきた。ふりがなも極力、そのまま。今の出版コードに抵触するような表現も残した。
オリジナルは全46巻だが、殺人など大人向けの話を、乱歩の弟子が子ども向けに書き直した巻も多い。復刻文庫では、乱歩の手による少年探偵もの26巻だけを選んだ。徹底して「オリジナル」にこだわっている。
「表紙絵を含め当時ドキドキしながら読んでいてくださった方に、今、まさに“大人買い”していただければ、と思います」。同文庫では、同様に復刊した怪盗紳士アルセーヌ・ルパン全集もある。子どもの頃の気持ちに戻って読んでみては―。
◆被災者に朗読活動 近年は一般書にも力を入れているが、もともとは児童書で知られるポプラ社。東日本大震災で避難している子どもたちのために、作家が絵本などを朗読する「読み聞かせ隊」の派遣や図書の寄贈などの応援活動を10日からスタートさせる。
参加予定作家は「ズッコケ三人組」の那須正幹氏、「かいけつゾロリ」の原ゆたか氏ら。吉川編集長は「被災して、子どもたちが本を失ったり、図書がなくなった学校もあると聞きます。徐々に活動を広げて、応援していきたい。いつかみなさんが、もう一度本を手にした時、その中に少年探偵シリーズも入っていると、うれしいですね」と話していた。10日は町長が被災し亡くなった岩手県大槌町に原氏が向かう。
(2011年5月10日06時00分 スポーツ報知)
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