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Posted by 中 相作 - 2015.09.29,Tue
ウェブニュース

週刊実話
 平成27・2015年9月25日 日本ジャーナル出版

本好きリビドー(73)
 中辻理夫、小林明
 Home > エンタメ > 記事

本好きリビドー(73)

掲載日時 2015年09月25日 19時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年10月1日号

◎快楽の1冊
『道徳の時間』 呉勝浩 講談社1600円(本体価格)

 今年5月に発表された第61回江戸川乱歩賞受賞作である。基本的に新人が応募して選ばれる賞なので、必ずしも過去の受賞作が完璧でハイクオリティーだったとは言えない。だが、完璧ではなくとも光るところ、そして書き手の将来性が見えれば選考委員は賞を与えるのだ。巻末の各委員の選評を読むと、応募時の原稿をかなり修正して8月に刊行されたようだ。それであっても、やはり文章の粗削りなところは散見されて、読者によっては読み始めたときに首を傾げてしまうかもしれない。要は大げさに表現することによって、分かりやすさを追求しようとしているのだが、個々の人物のセリフがありきたりのドラマのそれを彷彿させ、主人公のビデオジャーナリスト・伏見祐大の視点による地の文も言葉数が多い。ここまで書き込まなくても、読者はしばしば行間から想像して読み進めていくのだ。
 ただし、である。この小説には複数の事件を絡ませる統合力がある。これこそが本作のオリジナリティーだ。ミステリーなので当然、解かれるべき謎は物語の比較的最初のほうで呈示されるのが望ましい。伏見の住む市でウサギの死骸を入れた箱を放置する、幼い少女の両手を接着剤で鉄棒に固定するといった悪質すぎるイタズラが続いた。しかも前者には〈生物の時間を始めます〉、後者には〈体育の時間を始めます〉というクレヨンで書いたメッセージが残されていたのだ。加えて陶芸家の殺人事件の現場には〈道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?〉というメッセージが。
 読者はメッセージの意味を必ず知りたくなるだろう。さらに伏見は10年以上前に起きた殺人を追うドキュメンタリー映画を撮ることに。無期懲役になった犯人は「これは道徳の問題なのです」と語っている。つまりはメッセージを主軸にした受賞作だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 個人が開設しているブログが人気を博し、出版社の目に留まって書籍化されるケースは、今や珍しくない。『暇な女子大生が馬鹿なことをやってみた記録』(KKベストセラーズ/1000円+税)も、そんな1冊だ。
 著者であるブロガーは、匿名の女子大生。「漫画家のまんしゅうきつこさんのファン。自分の行き着く先は岩井志麻子さん」と自認するだけあって、エロ、セックス、男に対する好奇心は並外れており、自ら“ヤリマン”と称して突飛な行動に走る。そんな変わったタイプの女の子が、暇にまかせてさまざまな実験を繰り返し、ネットに公開した実録を本にまとめあげた。
 その実験とは「暇だから下の毛を剃ってみた」に始まり、「暇だから30代男性を逆ナンしてみた」「暇だからバイブバーに行ってみた」「暇だからストリップを観に行った」「暇だからレズビアンバーに行ってみた」など。
 「毛を剃ってみた」の章は、爆笑である。剃毛してみたら何かと喜ばれ(もちろん男に…)、涼しくて蒸れないが、一方で大浴場に行くと恥ずかしい、数日するとチクチクして痛い、というデメリットもあるという。さらに「剃り終えたら、剃刀負けしないように軟膏を塗る」んだそうだ。
 これを真面目に書いているのだから、まさに暇のなせるワザ。だが、これほどまで馬鹿げたことに熱意を傾け、ギャグを交えてつづったことに、拍手を送りたい。他の章も万事この調子。全編、抱腹絶倒である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
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