4月5日付エントリ「ものの道理アドバイザーはどうじゃろうな」のつづきをつづる。
でもって、ほんと、大変なわけ。
乱歩関連資料を収集しようと思ったら、まず乱歩作品を読まなくちゃだめだかんね、とかアドバイスしたならば、えーッ? うっそーッ! 信じらんなーい、と本気で驚いてしまうのが名張市立図書館なわけなの。
てゆーか、名張市という名の自治体が、これはもう全庁あげて驚いてしまうわけ。
ちなみに、名張市の庁舎はこんなんじゃ。
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庁舎はなかなか立派じゃが、ここに巣くってるみなさんときたらそれはもうな、うわーっはっはっは、とにかくな、乱歩関連資料を収集するんだったらまず乱歩作品を読まなくちゃね、というごくごくあたりまえの道理を聞かされたとたん、えーッ? うっそーッ! 信じらんなーい、と上を下への大騒ぎを演じてしまうわけなのであって、しかしおれとしてはやっぱ、信じられへんのはおのれらのどたまじゃこの便所下駄ッ、と思わず叫んでしまいたいような心境なわけなのね。
まったくどうよこの便所下駄。
便所下駄はたとえば、4月5日付エントリにも記したとおり、乱歩関連資料として乱歩賞受賞作品の単行本を収集し、特別あつらえの陳列ケースに展示してしまったりする。
それってかなり変じゃね? と思うのがまっとうな感覚というやつなのであって、まっとうな感覚のもちぬしであるおれは以前、名張市立図書館の嘱託を拝命していたとき、なんで乱歩賞受賞作品をわざわざ陳列ケースに展示するような真似してんの? と尋ねたことがあるのじゃが、最初からやってることだから、というのが名張市立図書館の返答であった。
封建時代さながらの前例墨守体質がいまもいきいきと息づいている、それがお役所というところなわけなのである。
だからおれは、もう知らね、好きにすれば? ということにしておいた。
展示だの陳列だの、そんなものは図書館にとって二義的なお仕事でしかない。
一義的なお仕事はなにかとなれば、いうまでもなく資料の収集である。
だから、展示や陳列なんて好きにしてれば? ということにしておいたのだが、ここで名張市立図書館の不幸を指摘しておくならば、1969年の開館以来こんにちまで、乱歩関連資料というのは読むものである、ということを理解している図書館関係者がただのひとりもおらなんだ、ということである。
名張市立図書館の関係者にとっては、乱歩関連資料というのはあくまでも展示したり陳列したりするものでしかないのである。
早い話、名張市立図書館が発行した目録のうち、『乱歩文献データブック』と『江戸川乱歩執筆年譜』を両手にもって、
「これ二冊ありますけどさなあ、こっちとこっち、表紙は違いますわてなあ。せやけど、中身はほれ、どっちも字ィ書いてあって、二色刷で、ふたつともおんなじですねさ。これ、こっちとこっち、どこが違いますの」
などと尋ねてくるようなひとが余裕で副館長として勤めていたのが名張市立図書館なのであって、しかもこれ、個人にとどまる問題ではなく、名張市という自治体のアベレージを物語るエピソードなんだろうな、とおれは思う。
このひとは正直だったからこんなぐあいに口に出してしまったけれど、口に出さない名張市役所のみなさんだっておそらくは、眼のまえに置かれた二冊の目録のみわけがつかず、かといってそれを手にとって読んでみることにはまったく思いおよばない、といったあたりであるはずであって、これすなわち尋常ではないアベレージなのである。
ふつうではない。
ほんと、ふつうじゃないのよ。
そもそもおれが名張市立図書館の乱歩資料担当嘱託になったのも、まあ「名張まちなかブログ」にくわしく説いたところだから、ここにくどくどくり返すことはせんけれど、乱歩にかんしてなにをしたらいいかわからない、と図書館サイドから泣きつかれたからだったわけであって、そんな簡単なことがわからんということじたい、そもそもふつうではないわけな。
で、嘱託になってみて、これはほんとにふつうじゃないな、と思わされたことは多々あったのじゃが、そのひとつは、収集した乱歩関連資料のリストが存在していない、ということであった。
図書館利用者のための目録、といったものではまったくなくて、内部資料としてのリストのことなんだけど、それがなかったのじゃ。
ほんと、信じられぬ話じゃろうが。
名張市立図書館は開館以来、というか、開館準備の段階から、東京は神田の古書店にも足を運んで乱歩関連資料を収集しておったと伝え聞いてはおったから、資料の書名や誌名をはじめとしたごく基本的な書誌情報を列記しただけのリストくらいはあるだろう、と踏んでいたのだが、それがなかったのじゃ。
まったく信じられない話なのであるが、まぎれもない事実であった。
収集資料をリスト化する、というぜひともやらねばならぬことをせず、こんちこれまた名張市民対象の乱歩読書会でやんす、などとばかなことをやっていたのが名張市立図書館なのである。
で、当時もいまもレベルはおんなじ。
乱歩にかんしてなにをしたらいいかわからないのは、当時もいまも変わりがない。
ふつうのことをふつうにやる、ということができない。
おれはなにも難しいことをいってるわけではない。
あたりまえのことをいってる。
ふつうのことをふつうにやれよ、といってるだけである。
ここにひとつの図書館があって、そこにオンリーワンの収集資料があるとする。
たとえば名張市立図書館なら、乱歩関連資料はまちがいなくオンリーワンの収集資料である、ということになるわけだが、ならば、いったいなにをすればいいのか。
とりあえず、資料のリストをつくる、目録をつくる、ということになる。
で、きょうびのことだから、リストなり目録なりはインターネット上で公開する。
のみならず、たとえば国立国会図書館と連携して、「レファレンス協同データベース」なんてのに参画する。
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つまりいまや、国立国会図書館が、全国の公共図書館、大学図書館、専門図書館なんかと協同でデータベースを構築している時代なのであって、名張市立図書館だって当然、収集した乱歩関連資料のデータベースをネット上に公開したうえで、国立国会図書館を中心とした連携の輪に加わるべきところなのであるが、それがまったくできていない。
なんともなさけない話であるが、さらになさけないことをお知らせしておくならば、このデータベースでたわむれに乱歩のことを検索し、ひっかかってきたあれこれの質問と回答を読んでみると、こんなのがある。
▼レファレンス協同データベース:江戸川乱歩 > 知り合いに聞いた話で、江戸川乱歩(エドガー・アラン・ポーと聞き違えたかもしれない)の作品で、象が川の中に死にに行く話があった。その作品を読んでみたいので、もし分かればタイトルを教えてほしいとのこと。
「事前調査事項」に記されたところを引用。
名張市立図書館が作っている「江戸川乱歩著書目録」から象に関連ありそうなタイトルとして、「象の鼻」を発見。これを含む作品名が「智恵の一太郎」とわかり、大阪府立図書館の「少年小説大系第7巻少年探偵小説集」を取り寄せてみたが、質問者の言う内容ではなし。
な。
なさけないじゃろう。
大阪府立中央図書館のスタッフが名張市立図書館のつくった目録をひもといて、乱歩にかんする質問に答えておるのじゃが、名張市立図書館はいったいなにをしておるのじゃ。
乱歩の著書目録をつくってる名張市立図書館が、どうしてそれをネット上で公開せず、国立国会図書館の協同データベースにも参加しておらんのであろうな。
いたってふつうのことを、どうしてしようとせんのであろうな。
乱歩関連資料を収集するのであれば、収集資料を逐次リスト化してゆくのは、ごくふつうのことである。
そのリストにもとづいて目録を発行する、というのもふつうのことである。
その目録をインターネット上で公開する、というのも当然要請されるところである。
それをどうして、名張市立図書館はしようとせんのであろうな。
それどころか、名張市立図書館の公式サイトにアクセスしてみても、この図書館が全国でただひとつ、乱歩関連資料を収集している図書館であるということがまったく示されていないのは、いったいどうしてなのであろうな。
むしろ、乱歩関連資料を収集していることができるだけばれませんように、みたいな願いと祈りが伝わってくるような公式サイトだという印象すらあるのじゃが、それはいったい、どうしてなんじゃろうな。
といったことで、結論としては、アドバイスしても意味がない、ということにならざるをえない。
収集した乱歩関連資料のリストをつくる程度のことはできていた、というのであればまだしも、名張市立図書館にはそんな基本的なことさえできていなかったんだから、なにかをアドバイスしたくらいでちゃんとしたことができるようになるはずがない、なにアドバイスしたって無駄であろう、ということになるわけなやっぱ。
おれが乱歩資料担当嘱託として、そこそこ質の高い目録をつくり、それをインターネット上でデータベースとして公開したらどうよ、という筋道までつけたやったというのに、いまだにそれができていないんだから、なにアドバイスしたって意味はないであろう。
で、流れとしては、アドバイス終わりましたッ、市長判断を仰ぎますッ、ということになったわけなのな。
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