Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2015.08.01,Sat
乱歩関連の古いコピーを整理していると、執筆者がすでに死去している文章、みたいなのにぶつかって、思わず感慨にふけってしまうことがあります。
訃報に気がつかなかった、あるいは、死去が報じられなかった。そうした場合、意外なところに没年が記載されているのをみて、あ、と小さく声をあげることになります。
これは以前にも記したことですが、月川和雄さんの死は南方熊楠関連のサイトで知りました。
▼南方熊楠資料研究会:月川和雄さん (1949-2008)
あと、こんなところでも。
▼Webcat Plus:古俣 裕介
こちらウィキペディア。
▼Wikipedia:高橋康雄
しかし、乱歩とは無縁ですが、最近たまたまぶっつかって、いちばん驚いた訃報はこれでした。
▼朝日新聞デジタル:ノンフィクション作家の日高恒太朗さん死去(2014年11月7日)
ちょうど十年前、『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』を押さえて日本推理作家協会賞評論その他の部門を受賞された日高恒太朗さんが、去年の11月3日、お亡くなりになってました。
あの年の評論その他の部門の選考にはおおいに問題があり、そのとばっちりが日高さんに及んで、なんであんな推理小説に無関係な作品が受賞したんや、無理筋すぎるやないか、あほとちゃうか、みたいなことを思った人もあったかもしれませんが、批判はむろん日本推理作家協会に向けられるべきであって、ここに謹んで日高さんのご冥福をお祈りする次第です。
▼asahi.com:名も知らぬ遠き島より 日高恒太朗さん(2006年07月16日)
しかし、六十三歳というのは、若すぎるような気もします。
というか、月川さん五十八歳、古俣さん五十二歳か五十三歳、高橋さん五十九歳、日高さん六十三歳、というのですから、私などあしたぽっくり逝っても、とか書いてるとほんとにそうなりそうですからやめといて、きのうのつづき、長沼弘毅の「鬼・乱歩」からもう少々。
乱歩は、作家としても大きな存在であったが、それよりも、ぼくは彼を、書誌学者として、また推理小説界の功労者としての価値のほうを重くみる。彼は、昭和初年の頃、ぼくに向って、「どうも想像力が弱くなって作品は、もう書けない」と、はっきり告白している。これは勇気のあることばである。自分の能力の限界を知り、自分で現役作家から引退すると明言したのは、ぼくの知っている限り、晩年の河東碧梧桐しかいない。しかし、乱歩は、その後、「幻影城」「続幻影城」「探偵小説四十年」といった後世にのこる大著述に心血をそそぐ熱情は、失わなかった。彼が、推理小説界につくした、多くの物語は、いずれ、その人を得て世に紹介されることとおもう。
「昭和初年の頃」とあるのは、ちょっとおかしいのではないかしら。
作家的想像力が枯渇して、心ならずも通俗長篇に走りました、と乱歩みずからいくたびも述懐しているのは、まさしく昭和初年のことですけど、そのあとも作品はせっせと書いてますから、この段落から総合して考えますに、昭和初年ではなく終戦直後のことだったのではないか、と思われます。
そういえば、これもコピーを整理していてぶつかったんですけど、角田喜久雄が1972年に書いた「推理小説文学論の周辺」に、こんな一節がありました。
終戦直後乱歩さんが、もう僕の時代は去った。今ジャーナリズムにもてはやされているのは木々君だからねと嘆いて、乱歩さんにもそんなコンプレックスがあったのかと私を一驚させたことがあったが、そういう時代背景の中でやがて乱歩さんを相手にして文学論を展開しはじめた木々さんの意気軒昂さは推してしるべしであろう。
終戦直後の乱歩に、もう作品は書けない、自分の時代は終わった、という自覚があった、というのはよく理解できるところです。
したがって長沼弘毅の文章も、乱歩が作品はもう書けないと口にしたのは、昭和初年ではなくて終戦直後のことであった、と理解すべきではないかと思われます。
それに、乱歩は早稲田大学在学中、品川の御殿山にあった川崎克の家で、近所に住む子供のひとりてあった長沼におはなしを聞かせてやったりしていたのですが、昭和初年になって、長沼相手にそんな苦悩を打ち明けていたとも考えにくい。
ちなみに、長沼が東大を出て大蔵省に入ったのは昭和4年だったそうですが、昭和初年にふたりが顔を合わせる機会なんてなかったのではないか、とも思われます。
だから、やっぱ昭和初年じゃなくて終戦直後のことだったんじゃねーの? と私は思います。
いくらお役人嫌いの私でも、だから元官僚のいうことなんてあてにならんのだ、とまではいいませんけど。
それに、還暦祝賀会で俳壇引退を表明した河東碧梧桐と、正式に引退表明したことなんて一度もない乱歩をいっしょくたにしてんじゃねーよ、という気もいたします。
だから元官僚なんて信用できないっていってんだろ、なっ、とはいいませんけど。
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