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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2015.03.11,Wed

 遅ればせながら、紀田順一郎さんの『幻島はるかなり』、読了いたしました。

 松籟社:幻島はるかなり

 読みどころのとても多いクロニクルで、江湖の読書子にひろくお薦めする次第ですが、通り一遍の感想はあっさり省き、読み終えて心に残ったことを二点だけ。

 まず、『幻島はるかなり』と比較してみると、乱歩のクロニクルたる『探偵小説四十年』の戦略性があらためて、いよいよ強く実感されてくる、というのが一点。

 それから、本文のあとに「推理小説、幻想文学の世界 思い出の人々」として、人生の軌跡を交錯させた故人十六人の思い出が綴られているのですが、その最後、竹内博さんの項を読み終えて、異様なほど痛切な感慨をおぼえた、というのが二点目。

 この結びは明らかに、この稀有な一冊の全体を照射している、という印象を抱きました。

 竹内博さんについては、以前にもご紹介いたしましたが、小西昌幸さんのコラムをどうぞ。

 フクロムシ&コブクロムシ怪獣なんでも研究所:新聞コラム 「哀悼・竹内博さん」(2011年7月13日)

 『幻島はるかなり』の「竹内博」は、こんなふうに結ばれています。

 間もなく、闘病中の竹内さんから手紙がきた。生涯を賭けて収集した雑誌をすべて、然るべき蔵書機関に有償で引き取ってもらいたいが、どこか紹介してもらえないかというのである。私は暗然とした。当時私の関わっていた文学館では、予算不足のために動いてもらえないことはわかっていた。しかし、資料を絶対に散逸させず、公開したいとする意思は貴い。できる限りの協力を約したが、このときほど自分の無力を感じたことはない。
 二〇一一年六月二十七日、多臓器不全のため東京都八王子市の病院で亡くなったときは、まだ五十五歳であった。その少し後、生前に投函されたらしいハガキが届いた。それには蔵書の一部を大宅壮一文庫に無償で寄贈したとあった。

 哀切きわまりない結び、それも「竹内博」の項のみならず、『幻島はるかなり』全体に嫋々たる余韻を響かせる幕切れですが、それはそれとして、いやまいったな、この本に「ミス研第一号」としてその草創が溌溂と語られている慶應義塾大学推理小説同好会のOB会から「然るべき蔵書機関」として蔵書の寄贈を受けたのは、「伊賀一筆」第一号の手記にも記したとおりわれらが名張市立図書館にほかならず、そのあたりをいったいどうするのか、ということが今秋発表予定の漫才「僕の図書館戦争完結篇」のメインテーマになることにはなってるんですけど、あんな図書館、ほんとにもうどうしようもないぞ。

 というか、日本の図書館は日々、かなりやばくなりつつあるようで、まだ読んでないんですけど「文學界」の4月号では特集まで組まれてるそうです。

 文藝春秋:文學界 2015年4月号

 ただし、先日の佐賀県知事選挙でみごと落選なさった樋渡啓祐さんとおっしゃるお調子者が同県武雄市の市長でいらっしゃったころ先鞭をおつけになった公立図書館TSUTAYA化作戦は、じつは非常にやばいものだという認識がここへ来てさすがに一般的になってきたようで、たとえばこんなツイートが。





 あとはまあ、「#公設ツタヤ問題」で検索してみてください。

 で、先日からお知らせしておりますとおり、名張市のおとなりの伊賀市においては現在ただいま公立図書館TSUTAYA化作戦が進められてるみたいなんですけど、名張市にしろ、伊賀市にしろ、もともとかけらほどの知性も教養もない連中が、きょうびのことばでいえば反知性主義や反教養主義でふんぞり返って他人の言に耳を貸すことなく、いやいや、いやいやいやいや、こんなこといくら書いてたってしかたないか。

 てゆーか、伊賀市のことはいいとして、名張市はついにここまで来てしまいました。

 伊勢新聞:名張市、固定資産増税へ 市長 自主財源確保へ方針示す(2015年3月10日)

 いよいよ断末魔の叫びをあげはじめましたがな。
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