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Posted by 中 相作 - 2015.01.20,Tue
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中日新聞 CHUNICHI Web
平成27・2015年1月18日 中日新聞社
没後50年 乱歩に迫る
築山栄太郎
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平成27・2015年1月18日 中日新聞社
没後50年 乱歩に迫る
築山栄太郎
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2015年1月18日
没後50年 乱歩に迫る
「少年探偵団(たんていだん)シリーズ」の本などが並(なら)ぶ鳥羽(とば)みなとまち文学館(かん)=三重県(みえけん)鳥羽市で
ミステリー小説(しょうせつ)は好(す)きですか。日本でその基礎(きそ)を固(かた)めたのは江戸川乱歩(えどがわらんぽ)(1894~1965年)という作家です。皆(みな)さんのお父さんやお母さんから上の世代(せだい)が子どものころ、圧倒的(あっとうてき)な人気を誇(ほこ)っていたのは彼(かれ)の「少年探偵団(たんていだん)シリーズ」でした。今年は乱歩が亡(な)くなって50年。テレビアニメなども企画(きかく)されていてブームになるかもしれません。 (築山栄太郎(つきやまえいたろう))
〔1〕異端扱い
乱歩(らんぽ)は三重県名張(みえけんなばり)市に生まれました。本名は平井太郎(ひらいたろう)。父親の仕事(しごと)の都合(つごう)で2歳(さい)のときに近くの亀山(かめやま)市に、3歳で名古屋(なごや)市に引っ越(こ)しました。名古屋では旧制第(きゅうせいだい)五中学校(今の瑞陵(ずいりょう)高校)を卒業(そつぎょう)するまで、主(おも)に広小路(ひろこうじ)通周辺(しゅうへん)で数回住(す)まいを変(か)えました。
東京(とうきょう)の早稲田(わせだ)大を卒業し、1923(大正(たいしょう)12)年に「二銭銅貨(せんどうか)」で小説(しょうせつ)家デビュー。「江戸川(えどがわ)乱歩」というペンネームは、アメリカの有名(ゆうめい)な探偵(たんてい)小説家エドガー・アラン・ポーの名前をもじったものです。
その後、「D坂(ディーざか)の殺人事件(さつじんじけん)」「心理試験(しけん)」など本格的(ほんかくてき)な短編(たんぺん)の探偵小説を書きました。しかし当時の流行(りゅうこう)もあり、だんだんと妖(あや)しさや気味悪(きみわる)さを追求(ついきゅう)した怪奇(かいき)小説のような作風に変わっていきます。
当時は夏目漱石(なつめそうせき)や森鴎外(もりおうがい)のような芸術性(げいじゅつせい)を重視(じゅうし)した純文学(じゅんぶんがく)が主流(しゅりゅう)でした。乱歩に詳(くわ)しい金城学院(きんじょうがくいん)大(名古屋市)文学部教授(ぶきょうじゅ)の小松史生子(こまつしょうこ)さんは「乱歩は人の評価(ひょうか)を気にし、作品(さくひん)に自信(じしん)が持(も)てない人でしたが、異端扱(いたんあつか)いされながらも頑張(がんば)って書き続(つづ)けたんです」と話します。
晩年(ばんねん)は新人作家の育成(いくせい)に力を尽(つ)くし、現在(げんざい)でも推理(すいり)作家の登竜門(とうりゅうもん)となっている「江戸川乱歩賞(しょう)」の創設(そうせつ)にも関(かか)わりました。
〔2〕作品影響
乱歩(らんぽ)ゆかりの地を訪(たず)ねました。名張(なばり)市の生家跡(あと)にある碑(ひ)は、50代(だい)になって帰郷(ききょう)を果(は)たした後、地元の人々によって建(た)てられました。市立図書館(かん)には乱歩コーナーがあり、愛用(あいよう)した帽子(ぼうし)やステッキ、筆(ふで)などの遺品(いひん)も展示(てんじ)されています。
乱歩の小説(しょうせつ)に名古屋(なごや)はほとんど登場(とうじょう)しません。それでも小松(こまつ)さんは「名古屋文化(ぶんか)の発信(はっしん)地・大須(おおす)や鶴舞(つるま)公園で入った見せ物小屋(ものごや)の影響(えいきょう)がにじみ出ています」と分析(ぶんせき)します。作家になってからの乱歩は名古屋に来たときは大須にあったホテルに泊(と)まり、そのトイレに気に入らない原稿(げんこう)を流(なが)したこともあるそうです。
乱歩が少年だったのは明治(めいじ)時代の終(お)わりごろ。名古屋は急速(きゅうそく)な近代化(きんだいか)が進(すす)み、田畑(たはた)や原っぱにいきなり洋館(ようかん)が立ち並(なら)ぶという光景(こうけい)が見られました。こうした世界観(せかいかん)は、小説「パノラマ島奇談(とうきだん)」に色濃(いろこ)く表(あらわ)れています。死(し)んだ金持(かねも)ちになりすましたうり2つの男が、家の財産(ざいさん)を使(つか)って離島(りとう)に自分の理想(りそう)の楽園を築(きず)くストーリー。作家デビューする前、造船所(ぞうせんじょ)の事務員(じむいん)として働(はたら)いた三重県鳥羽(みえけんとば)市が舞台(ぶたい)とみられています。
乱歩は鳥羽で知り合った教師(きょうし)と結婚(けっこん)します。この地方の民俗研究(みんぞくけんきゅう)で知られ、画家として「パノラマ島奇談」の挿絵(さしえ)も手掛(てが)けた岩田準一(いわたじゅんいち)とも知り合い、後に親友になります。かつての準一の家は「鳥羽みなとまち文学館」として、乱歩と鳥羽の関(かか)わりを紹介(しょうかい)しています。
準一の孫(まご)で館長の準子(じゅんこ)さんは「『屋根裏(やねうら)の散歩者(さんぽしゃ)』に登場する屋根裏から人々の生活を盗(ぬす)み見る主人公(しゅじんこう)は、職(しょく)を転々(てんてん)とし、鳥羽で社員寮(しゃいんりょう)の押(お)し入れにこもっていた乱歩自身(じしん)がモデルです」と話します。
〔3〕シリーズ
そんな乱歩(らんぽ)が1936(昭和(しょうわ)11)年、少年向(む)け雑誌(ざっし)に発表(はっぴょう)したのが「怪人(かいじん)二十面相(めんそう)」。少年探偵団(たんていだん)シリーズの第(だい)1作になりました。
大泥棒(どろぼう)の二十面相は、青年や老人(ろうじん)などあらゆる人や、大コウモリなどに変装(へんそう)して警察(けいさつ)や金持(かねも)ちの目を欺(あざむ)き、高価(こうか)な宝石(ほうせき)や美術品(びじゅつひん)を盗(ぬす)みますが、決(けっ)して人を殺(ころ)しません。彼(かれ)を追(お)うのが名探偵・明智小五郎(あけちこごろう)と、小林(こばやし)少年をリーダーとする少年探偵団。小林少年も、仏像(ぶつぞう)や本棚(ほんだな)に化(ば)けて二十面相をうならせます。
小松(こまつ)さんは「二十面相は悪役(あくやく)だけどヒーローでもある。いつも明智に勝(か)てないが、めげずに何度(ど)も仕掛(しか)けてくるのが魅力的(みりょくてき)」と話します。戦後(せんご)にかけて乱歩の作品の数は減(へ)りますが、このシリーズだけは精力(せいりょく)的に書き続(つづ)けました。名張(なばり)市で乱歩を研究(けんきゅう)する中相作(なかしょうさく)さんは「子どもたちから驚(おどろ)くほどのファンレターが来た。それがうれしくて、乱歩のライフワークになっていったのでしょう」とみています。
「小説(しょうせつ)の世界(せかい)に飛(と)び込(こ)めば、二十面相や小林少年を通していろんなものになることができ、物事(ものごと)を論理(ろんり)的に考える力が付(つ)きます」と中さん。小松さんは「このシリーズが面白(おもしろ)かったら『押絵(おしえ)と旅(たび)する男』『人間椅子(いす)』など、大人向けミステリーも没後(ぼつご)50年のこの機会(きかい)に読んでみましょう。怖(こわ)いものに触(ふ)れるのは、よく分からない他人(たにん)を理解(りかい)しようとする気持ちにつながる。世界が変(か)わりますよ」と呼(よ)び掛(か)けます。
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