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Posted by 中 相作 - 2015.01.10,Sat
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毎日新聞
 平成27・2015年1月6日 毎日新聞社

SUNDAY LIBRAR:岡崎武志・評『餃子の王将社長射殺事件』『晩鐘』ほか
 岡崎武志
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SUNDAY LIBRARY:岡崎 武志・評『餃子の王将社長射殺事件』『晩鐘』ほか

2015年01月06日

 ◇周到に隠された深い闇を暴く

◆『餃子の王将社長射殺事件』一橋文哉・著(角川書店/税抜き1600円)

 2013年暮れ、京都市の本社前で「王将」社長が射殺された。事件発生から1年、いまだに犯行理由がわからず、捜査も進展せず。事件は迷宮入りか?

 一橋文哉『餃子の王将社長射殺事件』は、そんな難事件の真相に迫る。最初、暴力団とのトラブルかと思われたが、著者は「そんな簡単な構図ではない」ことにすぐ気づく。取材の過程で、老婦人の口から何気なく出た一言。「王将」のカリスマ創業者と一族が抱える闇の深さにたじろぐ。

 著者は「グリコ・森永」「三億円強奪」「宮?勤」など、さまざまな事件に取り組んだ際の、バツグンの調査力をもって、深い闇を照らして突き進んでいく。V字回復で建て直した経営手腕と美談に彩られた被害者。しかし、じつは「王将」にブラック企業の一面があった?

「王将」と福岡との深い因縁、戎橋店火災の裏事情など、ページをめくる指が震えてくる。これを読めば、「王将」で食べる餃子の味が、複雑に感じられるはず。

◆『晩鐘』佐藤愛子・著(文藝春秋/税抜き1850円)

 今年91歳の佐藤愛子が放つ新作長編が『晩鐘』。著者は同人誌仲間だった田端麦彦と結婚するも、夫が事業に失敗、借金を背負う。そして離婚。そのことを書いた直木賞受賞作『戦いすんで日が暮れて』から45年。田畑(小説では畑中)の訃報を老作家・藤田杉(著者がモデル)が聞くところから本作は始まる。他者への手紙と交互させながら、著者が描き出すのは、かつて青春を共にし、苦しめられた男の実相であった。作家生活の総決算ともいうべき力作。

◆『全員少年探偵団』藤谷治・著(ポプラ社/税抜き1500円)

 藤谷治『全員少年探偵団』は、江戸川乱歩生誕120年を記念しての企画刊行。少年期に夢中になって読んだ装丁で、あの「少年探偵団」シリーズの設定そのままに、著者が現代に甦らせた。白い霧が東京の街を包んだ日、全身灰色のこうもりのような紳士に、小学六年生の元基くんが連れ去られた。元基くんが残した「カクイだな」という言葉の謎解きは? こうもり男が狙う「呪いのトパーズ」を含め、明智探偵のもと、少年探偵団が立ち上がる。

◆『日本国最後の帰還兵』深谷敏雄・著(集英社/税抜き1800円)

 深谷敏雄『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』を読むと、敗戦後70年を経て、まだこのような話があるのかと驚く。深谷義治は、第二次大戦時に日本軍のスパイとなる。戦後も特命を受けて中国に潜伏。逮捕され獄中に。過酷な拷問に耐え、20年を経てなお黙秘を続けた。1978年に日本へ一時帰国するまで、一家の生活は差別、極貧と悲惨を極める。義治の次男が、一家の真実を知らせるべく、ようやく筆を執ったノンフィクション。

◆『西原理恵子と枝元なほみのおかん飯』西原理恵子・枝元なほみ/著(毎日新聞社/税抜き880円)

「毎日かあさん」の漫画家と人気料理研究家がタッグを組んだ料理本が『西原理恵子と枝元なほみのおかん飯』。「食べたい」と「痩せたい」を同時にクリアする、しかも簡単料理のレシピ満載だ。フライパンでたった20分の簡単カレーに始まり、大根をめん状にしたすき焼き、ビールに最適の鶏のスパイシーグリルと、箸が休む間がない。料理を前に2人で言いたい放題の対談も楽しい。ダイエット女子をうならせ、食欲倍増のおいしい一冊。

◆『相方が鉄ちゃんでして…』千原櫻子・著(洋泉社/税抜き1200円)

 電車を見たらまず写真、パンタグラフもしっかり撮影。でも、旅行の記念写真らしきものはほとんどない。千原櫻子は『相方が鉄ちゃんでして…』で“鉄”分過剰な日々を描く。ドイツの寝台列車で威圧的な国境警備隊に検問を受けるも、「アイラブレイルウェイ!」で切り抜ける愛すべきキャラの相方。駅を見るだけのために、1万円かけてタクシーで往復するこだわり。不思議で強烈な趣味の世界に巻き込まれつつも、楽しむ様子がほほえましい。

◆『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』田村隆一/長薗安浩・著(ちくま文庫/税抜き880円)

 1998年に没した田村隆一が、晩年に長薗安浩相手に語ったのが『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』。「結婚」「酒」「旅」「欲」「戦争」など、テーマは24。人生の達人が、若者相手にメッセージする。「女性と擦れ違った瞬間を大切にする」。ただし「男は振り向いてはいけない」。「教養」は、「骨身に沁みて初めて身につくんだよ」。「借金」は、「貸した人は、忘れること」。これが「健康の秘訣」。随所に著者の詩作品が掲載されている。

◆『隠れ蓑』野口卓・著(新潮文庫/税抜き630円)

 文庫書き下ろしによる、野口卓『隠れ蓑』は、「北町奉行所朽木組」シリーズの第二弾。全4編を収録。「朽木組」とは、定町廻り同心の朽木勘三郎と岡っ引きの伸六、およびその手下による6人のチームで結束は固い。表題作は、朽木と藤原道場で同門の小池文造が、両国で目撃されるところから始まる。彼は私闘に破れ逐電したのだが、うぬぼれで朽木を恨んでいる。やむなく再び剣を合わせることになるが……。きびきびした叙述と切れのいい結末。

◆『オリーブの罠』酒井順子・著(講談社現代新書/税抜き800円)

 1980年代、男ウケを狙う女子大生向けの「赤文字雑誌」が流行するなか、個性的なファッションで身を飾る女子高生をターゲットにした雑誌『オリーブ』が人気に。同雑誌で高校生ながらライターとして参画した酒井順子が、『オリーブの罠』で、熱狂的に支持された雑誌の人気の秘密を解き、その時代を振り返る。「オリーブ少女」と呼ばれた女の子たちの正体は? アイコンとなった栗原美恵子の魅力など、雑誌がもたらす影響力の強さを実感する。

◆『オリーブオイル・ハンドブック』松生恒夫・鈴木俊久/著(朝日新書/税抜き1000円)

 松生恒夫・鈴木俊久『オリーブオイル・ハンドブック』は、かつて「オリーブ少女」だった女性たちが手を出すような本か。アンチエイジングの効果を信じ、いまや世界第4位の輸入量で、愛用者急増なのが「エキストラバージン・オイル」。腸の専門家が健康面から効能を論じ、国際オリーブオイル協会認可のスーパーバイザーが、その歴史から選び方、テイスティング法までをガイドする。オリーブオイルの成分分析から調理法まで何でもわかる。

◆『埼玉化する日本』中沢明子・著(イースト新書/税抜き861円)

 何にもなくて「ダサイタマ」と嘲笑されがちな県が埼玉。東京生まれの東京育ちの中沢明子は、その埼玉に魅せられ移住。礼賛の書『埼玉化する日本』を書いた。ショッピングモールに巣食うマイルドヤンキーから消費を語る言説に反論。普通の人が「ちょうどよく生きられる」場所として埼玉を推す。「高感度消費」「マス消費」「ちょうどいい」観点から、日本はすでに「埼玉化」してるとまで言い切る。だってエキナカ第1号は大宮だよ。本当だ。

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おかざき・たけし 1957年生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。近著『上京する文學』をはじめ『読書の腕前』など著書多数

※3カ月以内に発行された新刊本を扱っています

<サンデー毎日 2014年1月18日号より>
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