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Posted by 中 相作 - 2014.12.23,Tue
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平成26・2014年12月19日 読売新聞社
自分の名作アンソロジーを
鵜飼哲夫
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自分の名作アンソロジーを
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自分の名作アンソロジーを
2014年12月19日 08時00分
絵・福井若恵
名作アンソロジーは、おいしい。作者によって言葉が磨きぬかれ、編者によって選び抜かれた中短編の秀作が一冊の本に会するからだ。
講談社文芸文庫から刊行が始まった『現代小説クロニクル』(日本文芸家協会編、全8巻)が、それだ。1975年から40年間に発表された名作を5年単位で選ぶもので、既刊の第1回配本は「1975~1979」。戦後生まれで初めて芥川賞作家になった中上健次の「岬」、タイトルが流行語にもなった三田誠広の芥川賞作品「僕って何」、田中小実昌の「ポロポロ」など7編。まさに日本文学史を見るようで、アンソロジーの王道を行く。
これに対して、新潮文庫100年記念出版の『日本文学100年の名作』(全10巻)は、「珍しい発掘作品もちりばめる」と編者の一人である松田哲夫さんが刊行の辞に書いたように、松田さん、独文学者の池内紀さん、評論家の川本三郎さんという希代の本の読み手たちの個性がにじむ。
3人が一致して選んだ林芙美子「風琴と魚の町」、太宰治「トカトントン」など名作中の名作もあるが、乱歩が愛読した宇野浩二「夢見る部屋」をはじめ、今では忘れられがちな作家の隠れた名作に面白みがある。第2巻のタイトルにもなった加能作次郎「幸福の持参者」は「庶民のささやかな暮しを描いた愛すべき小品」(川本)。一匹のコオロギが夫婦にもたらす人生の哀歓を描く。戦後の松川裁判批判に尽力し、逆転無罪に貢献した広津和郎の「訓練されたる人情」は、チェーホフの『可愛い女』の日本版とでもいうべき短編で、ほれっぽくて、子供ができやすい花街の女性が主人公だ。ラストには人の情けがあふれる。
最新刊の第4巻『木の都』に収録の長谷川四郎「鶴」は、シベリア抑留体験をもとにした作品で、「戦争の愚かしさを描ききった傑作」(松田)。とはいえ、この小説、発表当時は芥川賞候補になりながら注目されず、落選している。一方で、文学史に残る白樺派や新感覚派の有名作家の多くが、今回は選から漏れた。
時代の変化が、セレクションにも大きな影響を与えており、新潮版には、新しく編み直されたもう一つの文学史という味わいがある。
読んで、自分の好きな作品を選ぶのも楽しい。それは読者による名作アンソロジーになるだろう。(編集委員 鵜飼哲夫)
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