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Posted by 中 相作 - 2014.12.13,Sat
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 平成26・2014年12月8日 読売新聞社

『日本ミステリー小説史』 堀啓子著
 尾崎真理子
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評・尾崎真理子(本社編集委員)

『日本ミステリー小説史』 堀啓子著

2014年12月08日 08時00分



 謎を論理で解くミステリー小説は、米国のエドガー・アラン・ポー作『モルグ街の殺人』(1841年)に始まる。

 饗庭篁村あえばこうそんがこの翻訳を読売新聞に掲載したのは1887(明治20)年。94年にはシャーロック・ホームズも紹介され、江戸期から続く裁定もの、毒婦ものと影響し合いながら、それらの面白さが草創期にあった新聞の普及を強力に後押しする。最大の功労者は「萬朝報よろずちょうほう」紙の創設者で翻案を推進した、黒岩涙香るいこうだ。

 本著は、戦時には軍部に弾圧されながらも日本で多様な発展を遂げたこのジャンルの通史を、密度濃く語っていく。大正期の谷崎潤一郎、戦前の江戸川乱歩、甲賀三郎、夢野久作、敗戦直後は横溝正史、そして社会派ミステリーで一世を風靡ふうびした松本清張。軸を成す作家の横顔や創作動機も端的に伝わる。

 「デカ」という呼び名の由来や、クライマックスに断崖絶壁が選ばれる理由などの逸話もぎっしり。尾崎紅葉『金色夜叉』の種本を英語小説から探し当てた気鋭の比較文学者が、学識を惜しみなく投入したコストパフォーマンスの高い一冊だ。

 中公新書 880円

2014年12月08日 08時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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