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Posted by 中 相作 - 2014.10.30,Thu
ウェブニュース

東京新聞 TOKYO Web
 平成26・2014年10月26日 東京新聞(中日新聞東京本社)

日本ミステリー小説史 堀啓子著
 権田萬治
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【書評】

日本ミステリー小説史 堀 啓子 著

2014年10月26日



◆親しみやすい入門書

[評者]権田萬治=文芸評論家

 最近日本の大学の研究者の間にも欧米と同じようにミステリーに対する関心が高まっている。本書の著者も大学で日本の近代文学や比較文学を研究している気鋭の学者で、評者は氏の「二つの『白髪鬼』-涙香と乱歩の翻案をめぐって」という興味深い評論を読んだ記憶がある。

 しかし、本書は専門的な研究書ではなく、日本のミステリーの歴史の入門書という色彩が強い。新書という限られた紙幅の中で、ミステリーの起源から戦前戦後の日本のミステリーの歩みを描くのは至難の業で、どうしても広く浅くという感じになりがちである。

 著者は初心者の読者に親しみやすいように、写真を多く取り入れ、肩の凝らない話題をいくつもコラムで取り上げるなど工夫を凝らしている。ミステリーとは関係のないトピックのコラムがかなり多いが、「シャーロック・ホームズの好敵手」などは最近の読者もあまり知らないことで面白い。ただ、序章のミステリーの起源についてのシェークスピアや聖書の話はあまり意味がないのではないか。

 戦前のミステリーの歴史については中島河太郎の名著『日本推理小説史』があり、戦後の動きまで要領よくまとめたものは郷原宏の『物語日本推理小説史』しかない。本書は、後者と重なるところが多くなったが、手頃な入門書としてお薦めできると思う。

  (中公新書・950円)

 ほり・けいこ 1970年生まれ。東海大教授。著書『和装のヴィクトリア文学』。

◆もう1冊 
 紀田順一郎著『乱歩彷徨(ほうこう)』(春風社)。日本のミステリー界に大きな足跡を遺(のこ)した作家の作風の変化と魅力を語る。
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