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Posted by 中 相作 - 2014.09.28,Sun
ウェブニュース

毎日新聞
 平成26・2014年9月24日 毎日新聞社

SUNDAY LIBRARY:岡崎 武志・評『「らしい」建築批判』『笹の舟で海をわたる』ほか
 岡崎武志
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SUNDAY LIBRARY:岡崎 武志・評『「らしい」建築批判』『笹の舟で海をわたる』ほか

2014年09月24日

 ◇誰のため、何のためのものなのか

◆『「らしい」建築批判』飯島洋一・著(青土社/税抜き2400円)

 2020年東京五輪開催にともない、新国立競技場建設が決定。設計者はイラク出身の女性建築家ザハ・ハディド。お祭りムードに乗り、予算を大きく超える巨大建築が出現しようとしている。

 しかし、『「らしい」建築批判』で、建築評論家の飯島洋一は、「らしい」をキーワードに待ったをかける。コンペの審査員やクライアントの期待に応えるため、ブランドとして生み出されるのが「らしい」建築だ。著者は建築史の流れをたどりつつ、これを正面から批判する。

 そこに働くのは資本主義の力学と設計者の美意識で、土地の歴史や風土、周辺環境は無視される。建築は消費されるアートではない。「何よりも重要なのは、建築はそれを使う人たちのものだという当り前の事実である」という著者の主張はきわめて真っ当だ。

 3・11以後、建築に対する飯島の主張は、さらに真剣に受け止められるべきだろう。諸君、祭りも虚栄も終わった。我々は住み良く懐かしい家に帰ろう。

◆『笹の舟で海をわたる』角田光代・著(毎日新聞社/税抜き1600円)

 角田光代の『笹の舟で海をわたる』に登場する二人の女性。主婦の左織と料理研究家の風美子。同い年の二人は戦中の疎開先で知り合い、その後再会。妙な縁で、夫同士が兄弟という関係になる。長い昭和が終わり、どちらの夫も死に、子も手を離れた今、二人で住もうと家を探し出すが……。風美子は「不幸なできごとはあったけれど、でも不幸な人ではない」。私は? 友情かライバルか。二人の女性の生き方を、昭和史に乗せて描いた新境地。

◆『優雅なのかどうか、わからない』松家仁之・著(マガジンハウス/税抜き1600円)

 デビュー3作目、松家仁之の新作は『優雅なのかどうか、わからない』。雑誌編集者の岡田匡は、48歳にして離婚、古い家を借りて独り身となる。雑木林に建つ地下室つき一軒家。同居人はネコ。気ままな一人暮らしが始まった。新しく住む町で、思いがけず、かつて交際していた女性と出会う。13歳年下の佳奈は、独身のまま同じ町に住んでいた。再燃する思い、中年男の苦渋……期待をこめつつ、ドキドキしながらページをめくる男の恋愛小説。

◆『熊田千佳慕のハイカラ人生記』熊田千佳慕・著(求龍堂/税抜き2000円)

 花や虫の驚くべき細密な絵が、老年になって評価された熊田千佳慕。98歳まで生きた。その自伝が『熊田千佳慕のハイカラ人生記』だ。横浜の医者の家に生まれ、ハイカラで裕福な少年時代を送る。軍事教練で、草むらに伏せ、「虫の目の高さで描く」姿勢に啓示を受ける。絵を一枚たりとも売り渡さない貧乏生活の中、独自の画境を見いだす。「いつも、神さまと対話しながら、描いています」。困難をものともせず、ユーモラスな生涯は魅力的だ。

◆『昭和・平成 お色気番組グラフィティ』佐野亨・編(河出書房新社/税抜き1600円)

 仕事を忘れて読みふけってしまった。佐野亨編『昭和・平成 お色気番組グラフィティ』は、「11PM」「23時ショー」「トゥナイト」など、男たちの夜を熱くした伝説のお色気番組の研究書。番組の紹介はもちろん、主要関係者へのインタビュー、各種コラムなど、紙面を盛り上げる。宝塚出のお嬢様が「よくわかんないうちに、そういうことに」と、「11PM」アシスタントを務めた朝丘雪路談話は必読。テレビに元気があった時代を実感する。

◆『夢見る部屋』池内紀・川本三郎・松田哲夫/著(新潮文庫/税抜き710円)

 じつは岩波文庫より創刊が古い新潮文庫100年を記念して、日本文学の名作を全10巻に収める。編者は池内紀・川本三郎・松田哲夫。第1巻(1914─1923)『夢見る部屋』は、荒畑寒村「父親」、佐藤春夫「指紋」、芥川龍之介「妙な話」、江戸川乱歩「二銭銅貨」など。宮地嘉六「ある職工の手記」はシブいセレクト。「父親」では、大正初期の東京、とくに中央線沿線の描写が興味深い。当時、荻窪を過ぎると「畑と、丘と、雑木林ばかり」だった。

◆『最高齢プロフェッショナルの教え』徳間書店取材班(徳間文庫/税抜き630円)

 88歳のパイロット、96歳の喫茶店店主、103歳の声楽家……。これらみな現役のプロ。徳間書店取材班『最高齢プロフェッショナルの教え』は、寄る年波を乗り越えて輝く14人の達人に取材。戦前から70年飛んだ「飛行機の神様」は言う。つねに健康を維持。「今のところ飛行機を降りる理由が見当たりません」。「好奇心を持って『なぜ? なぜ?』と追求」し続けた喫茶店店主。いずれも長年の自信に裏打ちされた、貴重な教えばかり。

◆『ミリオンダラー・アーム』J・B・バーンスタイン/著(集英社文庫/税抜き600円)

 人口10億を超える国なのに、野球に関心がない大国インド。しかしどこかに未来の大リーガーがいるはずだ。J・B・バーンスタイン(横山啓明訳)『ミリオンダラー・アーム』は、アメリカのスポーツ・エージェントである著者の発案で始まった、空前のスカウト計画を描いたノンフィクション。郵便も容易に届かぬ村で見つけた二人の少年がアメリカへ。果たして彼らは、大リーグ入りが叶うのか? 本書を原作とする映画が、この秋から全国ロードショー。

◆『金田一家、日本語百年のひみつ』金田一秀穂・著(朝日新書/税抜き760円)

 戦前は祖父の京助、昭和は父親の春彦、そして平成が著者と、日本語研究の第一人者の血を受け継ぐ金田一家。平成の金田一秀穂が『金田一家、日本語百年のひみつ』で、一族の歴史と、いまの日本語について語る。最近耳にする敬語的表現を、「コンビニ敬語」と名付け、それがいかにおかしいかを解説。流行語は「言葉を自由に使っているようにみえて、実は逆に言葉によって縛られている」などの指摘が新鮮で、自然に言葉について考えさせられる。

◆『信長と将軍義昭』谷口克広・著(中公新書/税抜き820円)

 谷口克広『信長と将軍義昭』は、従来の評価が、信長のもとで傀儡とされてきた足利義昭を、新資料などの検討から、別の光を当てる試み。つまり、京都において、将軍義昭は立派に政治力を行使したと著者は考える。京都を追われ、若江、堺、由良、鞆へと流浪していった義昭は、それでも「京都帰還を思い描いていた」。両雄並び立たず。この二つの個性が、いかに連携し、いかに対立していったか。人間くさい「執念と野望」を歴史から読み込む。

◆『ウルトラマラソンのすすめ』坂本雄次・著(平凡社新書/税抜き760円)

 24時間マラソンでおなじみの坂本雄次が『ウルトラマラソンのすすめ』を刊行。42・195キロを超える距離を走るのが「ウルトラマラソン」であり、国内では120ほどの大会が開かれている。長距離走は日本人の感性に合うスポーツであり、高齢のランナーも多い。ランニングの世界は「思いっきり人間臭い」と著者。自身も30歳から走り始め、大きく人生が変わったという。フォームや走り方の具体的なアドバイスがあり、ちょっと走ってみたくなる。

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おかざき・たけし 1957年生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。近著『上京する文學』をはじめ『読書の腕前』など著書多数

※3カ月以内に発行された新刊本を扱っています

<サンデー毎日 2014年10月5日号より>
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