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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.11.24,Sun
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Posted by 中 相作 - 2014.07.16,Wed

 暑い日がつづきますけど、お元気ですか。

 私はもうへろへろで、なんつったって、朝まだ暗いうちから起き出し、時間が空けば「伊賀一筆」第一号に掲載する「奇譚(抄)」の脚註なんてものを書く作業に没頭しておりますと、いまが明治時代なのか大正時代なのか、まさか昭和じゃあるまいな、みたいな感覚になってきて、こりゃ脱法ハーブより効きますぜ旦那。

 それでその脚註、けさようやく第一稿があがったのですが、これは第一稿というよりは下書きと呼ぶべき原稿で、これから脚註全体の整合性というか統一性というか、そういったものに意を用いつつ、全面的な見直し作業に入るわけですけど、なんかもうへろへろ。

 脚註がなぜ必要か、ということを確認しておきますと、乱歩自身の註記をどう扱うか、という問題がありました。

 まず、『奇譚』を清書していて、書いたすぐあとに、あ、抜けてる、とか、これは書いとかなきゃ、と気がついた、みたいなケースがあります。

 たとえば、「Preface」の第一ページ目には、「飜訳」という文言の上に「(1)」という書き込みがあり、ページ上部のマージンに「(1)純文学ノ外国人ノ手ニナッタモノハマダ一冊モ読マヌ。語学ノ力ガ足ラヌノガソノ原因ダ」という註記が見えます。

 つまり、「Preface」を書いてすぐ、あ、これは書いとかなきゃ、と気がついて書き加えた註記です。

 この場合、「飜訳」のあとに「[純文学ノ外国人ノ手ニナッタモノハマダ一冊モ読マヌ。語学ノ力ガ足ラヌノガソノ原因ダ]」と挿入する手もあるのですが、こうしたケース以外に、『奇譚』の清書を終えたあと、いつかの時点で新たに書き込まれた註記というのもあって、なかには本文に挿入するのが難しいものもありますから、註記はすべて脚註、というか、フットノートではなくてサイドノートというスタイルになるわけですが、とにかくそういう体裁といたしました。

 あとは、作品名と人名。

 こういう本を読みました、と書かれてあれば、ほんとにそんな本があるのかどうか、あるのであればいつ、どこの出版社から出た本なのか、あるいは、原作があるのであれば、だれのなんという作品なのか、はたまた、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーとして公開されているのかどうか、みたいなことをチェックしなければなりませんし、わけのわかんない人名なんかもいちいち調べて、それでもわかんないのが残ったりします。

 それから、乱歩が間違いや勘違いを犯してないか、みたいなことも気になってきて、たとえばデュマの項に「The Man in the Iron Mask」というのが出てきます。

 しかし、黒岩涙香が訳したのはボアゴベの「鉄仮面」、原題は「Les deux merles de m. de Saint-Mars(サンマールの二羽の鶇)という作品で、むろんデュマの「ダルタニアン物語」にも鉄仮面は出てきますけど、乱歩ははたして「ダルタニアン物語」を読んだうえでデュマの項を書いたのか。

 どうも、あやしい、という気がします。

 というのも、「The Man in the Iron Mask」の項には「全体ノ筋ハ今忘レタ。左程ノモノデモナカッタト思フ。殺人寝台ト云フモノヲコノ書デ始メテ知ッタ」とあるのですが、「殺人寝台」はボアゴベの「鉄仮面」に出てくる小道具ですから、「ダルタニアン物語」には関係がないのではないか。

 それにだいたい、「ダルタニアン物語」は一般に「三銃士」というタイトルで親しまれているわけですが、「三銃士」は「ダルタニアン物語」の第一部、鉄仮面が登場するのは第三部の「ブラジュロンヌ子爵」だそうですから、やはり「The Man in the Iron Mask」はボアゴベの項に記されるべきではなかったのかと思われる次第ですが、いったいどうなんでしょう。

 それでなくても暑いというのに、なんかおつむが沸騰してしまいそうですぜ旦那。

 以上、業務報告でした。
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