Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2014.07.02,Wed
集団的自衛権閣議決定、という大見出しが躍るけさの新聞をながめていて、あッ、と思いました。
あッ、結論、忘れとった。なんの話か。
5月17日の土曜日、私は徳島県の北島町で海野十三の没後六十五年と江戸川乱歩の生誕百二十年を記念した講演をおこなったのですが、結論をおはなししないまま講演を終えてしまった、ということを思い出した、という寸法です。
なんという失態か。
ちなみに、講演タイトルは、『永遠の0』たらいうベストセラーにあやかって、「永遠の十三」といたしました。
遅ればせながら、などといまさらいうのも愚かですが、集団的自衛権の閣議決定を記念し、その結論をここに記しておきたいと思います。
いざ。
海野十三とか、江戸川乱歩とか、もともと頭がよくて、しかも高等教育を受けたひとたちでも、いったん戦争に巻き込まれたら、どんどんどんどん気が変になっていったわけですから、やっぱり、戦争はよくないと思いまーす。
以上、結論でした。
海野十三は敗戦に際してひとたびは自殺を決意したんですけど、その理由のひとつとしては、作家としての戦争責任を引き受けようとした、ということがあげられると思います。
とくに、軍国少年を戦争に駆り立てたことが、取り返しのつかない失態として胸に強く迫ってきたのではないか。
講演の結論をいい忘れる、なんてのは、忘れた本人がこんなこというのもあれですけど、まあまあかわいい失態と呼べるでしょう。
しかし、がんばれ軍国少年、みたいな小説を書いてしまったという事実は、戦前から戦中にかけては当然のこと、むしろ賞賛されるべきことであったにしても、敗戦と決まればつぐないがたい失態と呼ぶしかないものになってしまいます。
ですから十三は、自死を思いとどまったあともある時期まで、二度と筆はとるまい、と思いつめていたりもしたわけです。
ところが、乱歩はいったいどうよ、と十三は首をひねりました。
なんかもう人格が一変したみたいになっちゃって、戦前の自作におけるグルーサムとセンシュアリティをあっさり反省したあとは、それでみそぎは済みましたといわんばかりにしれっとして、ひたすら本格本格また本格の高調子、本格にあらざれば探偵小説にあらず、と硬直したような論陣を張りましたから、本格嫌いの十三はもうあったま来ちゃって、あの温厚円満を絵に描いたような十三がですよ、やっぱり人格が一変したみたいになっちゃって、昭和22年の「探偵小説雑感」でついにぶち切れ、てめーこらばかのひとつおぼえみたいに本格本格ほざいてんじゃねーよこの変態男、と乱歩に牙を剥いたわけなんです。
つまり、乱歩も十三も、戦争のおかげですっかり気が変になっちゃって、戦争が終わったあともまだしばらくは、精神のこわばりみたいなものから脱することができなかった、ということです。
ですから、十三とか乱歩とか、もともと頭がよくて、しかも高等教育を受けたひとたちでも、いったん戦争に巻き込まれたら、どんどんどんどん気が変になっていったわけですから、戦争ってのはやっぱまずいぜ、と思います。
以上、再度結論をお送りいたしましたが、昨日夕刻の記者会見をテレビ画面で視聴した印象でいいますと、いまやわれらが安倍晋三さん、こんにちはッ、帰ってきたうんこたれッ、どころの話ではなくて、こんにちはッ、帰ってきた岸信介ッ、みたいな感じになっていて、手前は一驚を喫しました。
あの旦那、かなり本気ですぜ。
となると、やっぱ、これからの時代、合言葉は、がんばれ軍国少年、ってことになるのかしら。
海野十三が泣いてない?
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