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Posted by 中 相作 - 2014.03.28,Fri
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平成26・2014年3月23日 産経新聞社、産経デジタル
「錯視」に迷う、「江戸川乱歩」の寓居どこにある
福島敏雄、安元雄太(写真)
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平成26・2014年3月23日 産経新聞社、産経デジタル
「錯視」に迷う、「江戸川乱歩」の寓居どこにある
福島敏雄、安元雄太(写真)
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【河内幻視行】
「錯視」に迷う、「江戸川乱歩」の寓居どこにある
2014.3.23 12:00 (1/3ページ)[福嶋敏雄ワールド]
乱歩居住跡の石標。矢印通りに進んでも、どこにあるかは分からない(安元雄太撮影)
東淀川区、旭区、守口市を流れる淀川…から続く
ふむ、これならまちがうことはないだろう。大阪市営地下鉄守口駅(大阪府守口市)の改札口を出たところの周辺案内図をじっと眺め、(2)番出口のすぐ左手が八島町であり、そこに「江戸川乱歩寓居の跡」があった。度しがたい方向音痴だから、ホッとした。
(2)番出口をあがると、国道1号に沿って小さな公園があり、その裏手に「↑江戸川乱歩居住跡」という赤茶けた石標が立っていた。乱歩居住跡には文学碑があると、持参した資料には書かれている。
その碑を目ざして、「→」に沿って歩きはじめた。斜行する道沿いに民家や小さなマンションがあり、すぐに国道1号に出た。いぶかしい思いにとらわれながら、国道沿いをどんどん歩き、100メートルほど先のコンビニ店のあたりで、さすがに「おかしい」と、引きかえした。
こんどは「→」にこだわらず、周囲の住宅街をめぐり歩いたが、見つからなかった。
大正12(1923)年、乱歩は推理小説『二銭銅貨』でデビューした。つづいて『D坂の殺人事件』を書き、推理作家の地位を不動のものにした。その執筆場所が、父親と同居していた「↑」の居宅である。
石標の前で、散歩中のおじさんにたずねた。ニッタとした表情で笑い、「そこ」と指さした。「そこ」は、すぐ斜めにある小さなマンションであった。なんども通ったが、文学碑もなにもなかった。
「よく尋ねられるんですよ。以前は民家が建っていて、『明智小五郎誕生地』という文学碑もあったんですけどネ」
かるい憤りを覚えた。なんと不親切な「→」であることか。30分ちかくも、「遊歩者」のように、無意味にほっつき歩いていただけであった。
と、同時に、遊歩者とは、乱歩そのものであることに、思いがいたった。以下、遊歩者をめぐる、明治末から大正後期にかけての、文化史的な考察である。
「錯視」に迷う、「江戸川乱歩」の寓居どこにある
2014.3.23 12:00 (2/3ページ)[福嶋敏雄ワールド]
◇
夏目漱石を例にとれば、『それから』の代助、『門』の宗助、『こころ』の先生などといった主人公は、高等遊民と呼ばれる。高学歴なのに、定職にもつかず、親の仕送りや資産などで、悠々自適な生活を送っている。
明治の富国殖産の逸脱者、あるいは脱落者であり、都市部には、そんな連中がごろごろいた。
これが大正期に入ると、チマタにはカフェーやレストラン、ショーウインドー張りのハイカラな店、さらには見世物小屋など、目を楽しませるものが急激に増えた。ヒマな高等遊民も、このんで外出するようになった。
かれは遊歩者(フラヌール)と呼ばれた。見も知らぬ群衆のなかにフラフラと溶けこんだ高等遊民は、やがてある職業を見いだす。
探偵である。エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』の主人公や、イギリスの名探偵、シャーロック・ホームズも、もとは高等遊民であった。
探偵誕生の大前提として、市民社会が形成されていなければならない。欧米では19世紀半ば、日本では第一次世界大戦後の大正期後半あたりである。
そこに登場したのが乱歩であった。ここ守口や門真、東京などで、生涯、40回以上も引っ越した乱歩は、典型的なフラヌールであった。だが探偵になるには、もちろん条件がある。推理力である。
◇
京阪電車守口市駅は高架駅で、高架下には居酒屋やレストランなどが、ずらりとならんでいる。大正10年代、乱歩が大阪で働いていたころ、この駅で下車し、電車沿いの道を通って、帰宅した。
当時はもちろん高架ではなく、線路沿いには、進入防止のための黒く焼いた木柵がずらっと並んでいた。歩きつづけると、木柵はあとへ流れ、柵のあいだの鉄路や地面の眺めも変わっていく。だが乱歩は、そこに「錯覚の種が潜んでいる様な気がした」と、当時を振りかえっている。
「錯視」に迷う、「江戸川乱歩」の寓居どこにある
2014.3.23 12:00 (3/3ページ)[福嶋敏雄ワールド]
心理学でいう「錯視」である。これをヒントにしたのが、明智小五郎がはじめて登場する『D坂の殺人事件』であった。
主人公の男は、まだボサボサ頭のフラヌールであった顔見知りの明智が犯人だと思いこみ、明智が着ていた棒縞の着物の色が、目撃証人と一致すると決めつける。
だが明智はたんなる錯視だとしたうえ、「人間の観察や人間の記憶なんて、実にたよりないものですよ」とあっさりかわし、真犯人をみごとに当ててみせる。
--少年期、「♪ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団、勇気凛々(りんりん)瑠璃(るり)の色……」の音楽で始まる乱歩原作のラジオ番組『怪人二十面相』に夢中になった。
中年期、こんどは「かい人21面相」に遭遇した。編集局内に中年探偵団の大部隊が編成されたが、かい人21面相からは「おまえら、あほか」とバカにされただけだった。
「キツネ目の男」も、目撃者による錯視だったにちがいない。
(福島敏雄)
=続く
【河内幻視行】乱歩居住後の石標
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