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Posted by 中 相作 - 2013.12.27,Fri
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平成25・2013年12月25日 NHK
半世紀前の文士劇 フィルム発見
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半世紀前の文士劇 フィルム発見
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半世紀前の文士劇 フィルム発見
12月25日 17時25分
三島由紀夫に有吉佐和子や曽野綾子、昭和の文壇を彩る人気作家たちが一堂に会して芝居を楽しんだ「文士劇」
その様子を記録した貴重なフィルムが、このほど東京都内で見つかりました。
今から55年前、昭和33年の年の瀬に行われた文士劇。エネルギーにあふれた時代の「大忘年会」はどのようなものだったのか、ネット報道部の野町かずみ記者が解説します。
奇跡的に残っていたフィルム
このフィルムは、東京・品川区にある映像会社が、持ち主の分からなくなった古いフィルムを調査していた際に見つけました。
全部で12巻、60分に及ぶカラーフィルムには、文藝春秋が主催した昭和33年の文士劇の様子が、鮮明な映像で残されていました。
映画の撮影で使われていた画質のよい35ミリフィルムだったうえ、その後複製が取られることもなかったため、半世紀以上前の映像にもかかわらず保存状態は比較的よいということです。
文藝春秋は、当時の文壇を知る貴重な資料としてデジタル化しました。
隆盛を極めた文士劇
文士劇は文字どおり作家などの「文士」が演じる芝居で、明治時代に始まりました。
中でも、愛読者大会の余興として昭和9年に始まった文藝春秋主催の文士劇は、冬の季語として歳時記に載るほど広く定着していました。
大劇場を使った大がかりな催しだったにもかかわらず、観覧は無料、作家も出演料なしで出演していました。
特に人気を集めた昭和30年代は、戦後の混乱を乗り越えた日本が高度成長期に向かっていった時代で、文壇にも強い個性があふれていました。
スター作家がせりふに詰まったり、そうかと思うと玄人はだしの演技をしたりと、その奮闘ぶりが読者を喜ばせ、毎年テレビで中継されていたほどの人気だったということです。
映像には、舞台裏の様子も記録されていました。
作家たちが楽屋で本番を前にせりふを合わせたり、芝居の振りを確認したり、さらには締め切りが間に合わないと原稿を書く作家まで映し出されています。
来場者からも華やかな様子がうかがえます。映画監督の小津安二郎に評論家の小林秀雄、社会党の浅沼稲次郎に作家の江戸川乱歩など、多彩な顔ぶれが姿を見せました。
芝居を楽しんだ作家たち
文春の文士劇は、戦争による中断を経て昭和27年に再開、昭和53年まで続きますが、最も華やかだったというのが今回フィルムが見つかった昭和33年です。
石原慎太郎さんに三島由紀夫さん、おいらん姿の有吉佐和子さんに曽野綾子さんという、人気作家4人の顔合わせが話題になりました。
石原さんは、この2年前の昭和31年に「太陽の季節」で芥川賞を受賞。若手ながら、江戸一番の色男、助六という大役に抜てきされました。
対する敵役の意休は、当時文壇で不動の地位を築いていた三島由紀夫さん。
映像のナレーションも、「かたやボディービル、かたやサッカーで鍛えた、両者の一騎打ち」とはやしたてます。
この写真、右の白いひげの老人姿が三島由紀夫さん、そして左の鉢巻き姿が石原さんです。
石原さんによりますと、2人は互いのベストセラーのタイトルをアドリブで織り交ぜて演じました。
「三島さんが、僕に向かってたんかを切って、こら貴様、くるわを騒がす『太陽族め』と言ってきた。だからこちらも、『さてこそな』と返すところを(三島さんの作品『美徳のよろめき』に引っかけて)『よろめくな』と言いかえた。作家は孤独な仕事だけど、日頃やったことのない芝居をみんな楽しんでいた」
文士劇の常連だった石原さんは、当時の様子を懐かしそうに振り返っていました。
「皆さんに活力や元気を」
当時、文藝春秋の社員として舞台の黒子を務めていたのが、作家の半藤一利さん。
せりふを忘れた作家に後ろから教えたり、出番が来た作家を舞台のすそまで引っ張ってきたりと、この時期ばかりは仕事を返上して、1週間、文士の世話にかかりきりになったと言います。
出演する作家も、観客も、裏方も、みんなが夢中になった文士劇。
半藤さんは、スター作家が遊びのような劇に夢中になれた余裕と情熱は、この時代の空気を象徴していたと言います。
「あのころの私たち日本人は、自分たちが一生懸命働くことは戦後日本を作るために役立つと思っていたんです。だから文士劇もむだなことをしているとは思ってなくて、皆さんに活力や元気を与えるんだと思って一生懸命やっていました」
豊かな個性が集った文士劇。その映像は、新しい時代を切り開こうとした昭和の作家たちの勢いを、今の時代によみがえらせています。
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