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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2025.04.19,Sat
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Posted by 中 相作 - 2013.11.30,Sat

 本日の当地は、とてもよいお天気となっております。

 とはいえ、屋外イベントにおいでのかたは入念な寒さ対策をどうぞ。

 圏際・食彩・文化祭 ~ご当地グルメでまちおこしin名張~:Home

 とかいったって、イベントは午後3時半で終了ですけど。

 さて、『奇譚』の件ですが、やっぱホーソーンまで行かせてほしいの。

 第十章「ホーソーンその他」は、先日も記しましたとおり最初のほうにポーのつづきが流れ込んでいるのですが、おしまいのほうにもまたポーの訳書にかんする記述があって、『奇譚』のポー論はそれでようやく終了となります。

 だから、関係各位にはあれこれ大目にみていただいて、お願いだからホーソーンまで行かせてほしいの。

 ホーソーンのあとはいよいよドイルになるのですが、ちょっと読んでみるとこれがまた大変、ドイル論の最後のページはもともと余白になっていたのですが、あとになって追記が書き込まれています。

 乱歩が取り寄せたらしいドイルの原書にかんする追記なんですけど、これがとても小さい字で書かれていて、というか、文庫判に縮小したせいでかなり読みづらくなっていて、しかたないから朝っぱらから近所のコンビニで『奇譚』の当該ページを拡大コピーして、ようよう読めるようになりました。

 と思ったのですが、拡大しても判読できない文字が少なからずあって、ちょっと書き起こしてみたところはこんな感じです。

〓-7-24夜(本郷駒込林町六にて)

1917, His Last Bow, Some Reminiscence of Sherlock Holmesガ来タ。内容ハ、
The Adventure of Wisteria Lodge 一人ノ男が近頃友達になつた男を訪問して会食し翌朝目ザメルと家がカラになつてゐる。そして友達はその夜半、〓〓の〓で殺されてゐる。モンスターが窓からのぞく。仇うちの団体、仇うちせんと内部の婦人の手引により行けるも反対にやられた。会食したのは、又時間をまちがえて〓いたのは仇うちのばれぬ為。
The Adventure of the Cardboard Box EpisodeにResident Patientと同じものあり。カードボックスに二つの耳が入れて小包される。同じSの名ある姉の所ヘあやまり来る。ある男が夫人の間男をいきどほれる仇打。その結果を間男の手引したる婦人に知らせん為と知らる。
The Adventure of the Red Circle 不思議なる下宿人。顔を見せず。物言はず筆談。男が夫人のかくまふ為。近所の空屋よりのローソクの暗号通信。悪漢現れかへって打たる。
The Adventure of the Bruce-Partington Plans 潜水艦ノ図ヌすまる。地下鉄通の死人。汽車の屋根に死人を置く。国事探偵、死人の上〓の見所の犯罪。
The Adventure of the Dying Detective 春影の臨終の探偵
The Disappearance of Lady Frances Carfax 春浪のホシナ大探偵
The Adventure of the Devil's Foot devil's foot root と云ふ毒薬の話。アフリカ探検家。家内の戒め。兄がその毒によりて妹と弟二人を殺す。弟ハ狂気。探検家妹と恋仲〓仇打ちす。
His Last Bow ホームスが独探の手下によりてあばく。

 かなり無理して読んでみたのですが、それでも下駄にした文字が読めません。

 だったら、と新潮文庫の『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』をひっぱり出してきて、活字の小ささに難渋しながら巻頭の「ウィステリア荘」を走り読みしてみたのですが、「〓〓の〓で殺されてゐる」も、「まちがえて〓いたのは」も、なにひとつ見当がつかないという結果に終わりました。

 なんか、ばかなのかな、おれって、と思いました。

 しかし、世の中というやつ、わるいことばかりではありません。

 このエントリに記した件、みごと自己解決にいたりました。

 2013年11月24日:名張市には期待しないでください

 『Detective Story of E. A. Poe』という六片本が丸善に来ていた、とあるのですが、六片本とはなにか。

 北村薫さんがどっかに書いていらっしゃったのですが、それがどうにも思い出せない私でした。

 いやー、おれもずいぶん焼きがまわったもんだなあ、このあいだなんか、焼きがまわる、という慣用句を思い出すのに五、六分もかかってしまったもんなあ、と悄然たる日々を送っていたのですが、おかげさまで自己解決することができました。

 きっかけはたぶん、文春文士劇のフィルムが発見された、というニュースだったみたいで、NHKで放送された、という文章を読んだとき、頭のなかで連想が働いた、という明確な自覚はなかったんですけど、それからしばらくして、六片本のことは北村薫さんの『北村薫のミステリびっくり箱』で読んだのであった、たしかNHKのラジオ番組「文壇よもやま話」にかんする話題であった、と不意にひらめきました。

 で、これが大正解。

 北村さんの「CD解説を中心とした、あとがき」から引用いたします。

 文と声を突き合わせて、初めて分かることもある。馬場孤蝶が読書家だったと語る部分が、活字ではこうなっている。

 馬場さんは当時、あれは百本ッて言うのかねえ、それをもう絶えず読んでる人でした。

 何だか分からない。今回、この録音に耳を傾けると、乱歩は、こういっている。

 馬場さんがねえ、毎日読んでんだ。小さな活字の本をねえ、当時、あれは六ペンス本て言うのかねえ、それをもう絶えず読んでる人でした。

 我々は、サマセット・モームの『月と六ペンス』を知っている。そこから、乱歩が、《廉価本》という意味でいったのだろうと類推出来る。こういうところは、元の音を聞けたから分かることだ。《百本ッ》から《六ペンス本》は、逆立ちしても出て来ない。

 『奇譚』に書かれていた「六片本」もこの六ペンス本のことだとみてまちがいないと思われますが、ならば、sixpence book、ないしは、sixpenny book、という表現が廉価本を意味することばとして英米あたりで一般的だったのかどうか、ということまでは、残念ながら私には調べがつきませんでした。

 いやはや、少年老いやすく、学なりがたし。

 ちょっとちがうか。

 それはそれとして、お願いだから、ホーソーンまで行かせて。

(115)

CHAPTER 10
HAWTHORNE & OTHERS.

 HAWTHORNE = 一寸 Poe ノ事ニツイテ = Lombroso ヲシテ曰ハシメレバ Poe ヲ狂人ノ天才トナスデアラウ。コノ思想ハ僕モ同感シ得ル所デ、欧米ノ文学ヲ見ルニ凡テコノ狂人ノ色合ノナイモノハナイ。殊ニ北欧ノ文学ロシヤノ文学ハ左様ダ。Parisニモ時ニ狂人ヲ出ス。米国ニ Poeヲ 出シタノハ珍ラシイ。日本ノ鏡花ハ極メテ薄クハアルガ狂人ノ色彩ガナイデモナイ。
Charles Baudelaire ガ Poe ヲ訳シテ Paris ニ出シタ時仏人ハ熱狂シテ之ヲ歓迎シタ。ソノ仏蘭西人ガ僕ハ好キダ。見給ヘ、Doyle ハ寧ロ仏蘭西デ歓迎サレテ居ルデハナイカ。Baudelaire ノ訳シタ短文ハ次ノ数篇ダ。序文等モ目次ノ儘上ゲレバ。
──Table──
A madame Maria Clemm
Edgar Poe, sa vie ses oeuvres
──
Double assassinat dans la rue morgue

(116)

La lettre volée
Le Scarabée d'or
Le Canard au ballon
Aventure sans pareille d'un certain Fans Pfaall
Manuscrit trouvé dans une bouteille
Une descente dans le maelstrom
La Vérité sur le cas de M. Valdemar
Révélation magnétique
Les Souvenirs de M. Auguste Bedloe
Morella
Ligeia
Metzengerstein
──
ソシテ書名ハ Histoires extraordinaires。Curious novel ヨリモコレヲ応用シテ extraordinary novel ノ方ガヨイカモ知レヌ。
────
 サテ、Hawthorne ニ入ル。

 いや懐かしい。

 「Histoires extraordinaires」というのは一般的に「世にも怪奇な物語」と訳されて、ポー原作のオムニバス映画のタイトルとしても使用されたことがあります。

 はるか昔の高校生のころ、名張市のおとなりの旧上野市にあった上野映劇という映画館に、この映画をみにいったのではなかったかしら。

 ちょっと検索してみたら、YouTubeに予告篇らしきものがありました。


 アラン・ドロンがウィリアム・ウィルソンを演じたオムニバス第二部のダイジェストらしきものはこちら。


 全然おぼえてませんけど、アラン・ドロンかっけー、とは思います。

 それにしても、懐かしいなあ。

 というか、乱歩もいってるとおり、青春とは畢竟、一瞬の酔いである、ということをしみじみ実感いたします。

 乱歩がどこにそんなことを書いてたのか、というと、『奇譚』の117ページです。

(117)

彼ハ時ニ Poe ト併ビ称セラレ、Poe ヨリ内的ニ勝レタリトセラルヽ。然ルニ不幸ニシテ僕ハ未ダ彼ヲ余リ読ンデ居ラヌノデ確カニハ分ラヌガ、一部ヲ読ンデ直覚スル所ニヨレバ彼ハ Poe ヨリモ穏健デアリ随ッテ平凡デアルト思ハレル。僕ノ読ンダ中デ只一ツ面白イト思ッタノハ、Twice-Told Tales 中ノ何トカ云フ題デアッタガ、老人ガ若返ル薬ヲ飲ンデ青春ノ醜体ヲ極メ踏リ浮レル。ソレヲ一人ガ老人ノマヽ静カニ見テ居ル。軈テ薬ノ効ガ去ッテ皆老人ニナル。ソノ青年ヨリ老人ニ変ズル悲イ、厳粛ナ現象ガ Poe ニ近イ筆デ書カレテアッタ事ヲ記憶スル。青春畢竟一瞬ノ酔デアル。彼ノ作ヲ上グレバ、
Library of the world's best mystery and detective stories(上野 190、90)
コレハ Poe ノ Cryptography ト共ニ是非読マネバナラヌ。一度借リ様トシタラ出テ居ッタ。
Davit Pom(?)dexter's Disappearance and tales
Biographical stories
Golden touch(訳、金色王)
House of the seven gables

 「踏リ浮レル」は、たぶん「踊リ浮レル」。

 「Davit Pom(?)dexter's Disappearance and tales」は「David Poindexter's Disappearance And Other Tales by Julian Hawthorne」。

(118)

The Snow image(雪人形)
Little masterpieces 中、(日本人編)
The Marble Faun: Or, The Romance of Monte Beni
Mosses from an Old Manse
The Scarlet Letter(緋文字)
Selection from Tanglewood Tales 中、(日本人編)
Tales of the White Hills
True Stories from New England History, Ggrandfather's Chair(3)
Twice-Told Tales(原君ノ訳アリ)
 〃  〃  〃 and girls
Fields
Stories(The world's story tellers)
Tales, A selection with an introduction by Mathew(Cassell's National Library)
Tanglewood Tales
和訳ニハ、ありふれ物語、緋文字、ツワイストールドテールス、金色王、トモエ集、

 「 〃  〃  〃 and girls」とそれにつづく「Fields」は、なんのことだかようわかりません。

(119)

少年画師、ワンダブック、ギリシヤ勇士物語、雪人形、等ガアル。
 POE ノ訳=最近 Poe ヲ訳シタ人ハ谷崎精二氏デアル。ソノ内容ハ赤キ死ノ仮面、ウイリアムウイルソン、モレラ、楕円形ノ肖像、アッシャー家ノ滅落、モノストウナトノ対話、影、沈黙、アルンハイムノ地所、ランドアノ屋敷、リジア、早過ギタ埋葬、物云フ心臓、デアル。文檀ニ相当ノ地位ヲ有スル人丈ケニ評判ニナッタ。可也ヨク訳サレテ居ル。
大分前、本間久四郎氏ガ名著新訳ヲ出シテ之ヲ訳シタ。内容ハ、エドガーアランポーガ事(批評)、黄金虫、レーヴン(詩)、赤死病ノ仮面、陥井ト振子、黒猫物語、本間氏ハ僕ト似タ考ヲ持ッタ人ト見エ、最モ早ク黄色ノ顔ト題シテ自費デホームズノ叢書ヲ企テタ人ダ。惜イカナ余リ認メラレテ居ラヌ。ソノ後ホームズノモノヲ氏ハ大分訳シテ居ルガ、皆余リ売レタラシクモナイ。ドウモ日本人ニ探偵小説ヲ読ム力ノナイノハ遺憾ダ。氏ハ以来世ニ入レラレズドコカノ地方新聞ニ探偵小説ヲ出シナドシテ居ル。同情ニ値スル。

(120)

何トカ云フ文学博士ガ訳シテ甲虫附渦巻ト云フノヲ出シタ。本間氏ノ黄金虫ト云フノガアル、外ニ没落ト云フノモアル。山県五十雄ノ訳ニ宝堀リガアル。
森田思軒ノ訳ニ間一髪ガアル。思軒ノ漢文ヲ以テ Poe ヲ訳シタ所ニ味ガアル。Poe ノ絢爛タル文章ハ思軒ノ漢字ニシテ始メテ訳シ得ル。
上ゲ来レバ Poe ハ殆ンド過半訳サレテ居ルノダガ一向反響ノナイノハ批評家ノ疎漏カ剛慢カニヨラネバナラヌ。
我国デ多少 Poe ニ似タ人ヲ物色スレバ鏡花ヲ得ル。彼ノ文ハ物凄イモノガ多イ。然シ彼ノ深クナイ江戸子趣味ガ凄味ヲ深クセズ。意気ナ凄サニシテ居ルノガ慊ラヌ。然シ彼ハ彼デ一境地ヲ有スルノハ勿論ダ。Andreiyeff ノ血笑記ハアル点ニ於テ Poe ヨリ深イ。ロシアノ文字ガ慕ハシイ。仏語ト露語ヲ習ハネバナラヌ。烈風漁史ガ冒険世界デ髑髏ト甲虫ト題シ Gold Bug ヲ抄訳セリ。

◎楕円形の肖像 短篇ノ恋ニ関係アルモノヲ集ム。

 おしまいにある『楕円形の肖像』にかんする追記は、布施延雄の訳で大正8年12月18日に越山堂から出版された本のことらしく、たしかに巻頭の「訳者序」には「こゝには恋愛を取り扱つたものを主として集め、他に二篇だけ趣の違つたものを入れた」と記されています。

 近代デジタルライブラリー:楕円形の肖像:他七篇

 ですから、大正8年12月以降に書き込まれた追記、ということになるのですが、それがいつのことだったのかはわかりません。

 追記といえば、おとなりの121ページは余白となっているのですが、そこにこんな追記がでかでかと。


 これはいつごろの追記か。

 ちなみに、乱歩が江戸川藍峯なるペンネームを考案したのは大正9年のことだといいますから、その時点ですでにみずから和製のポーたらんとしていた、といっていいと思います。

 だとすれば、この書き込みは、とかいろいろ妄想するのも楽しいものですから、ぜひ一度おためしください。

 以上、ホーソーンまで行かせていただきましたッ。
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