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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中 相作 - 2013.11.18,Mon
雑誌

群像 12月号
 平成25・2013年12月1日 第68巻第12号 講談社
 平成25・2013年11月7日発売
 A5判 404ページ 定価950円(本体905円)

遠眼鏡
 木内昇
 特集《アンソロジー 名探偵登場》> p61-69

 長年の念願叶って上京したはいいが、当今話題の塔は真っ二つ、街もあらかた焼けていてまったくもって埒もない。
 茶の小商いでチマチマ貯めた金を元手にしばらく東京でひとり暮らしをしたい、俺はいずれ出る芽だ、こんな田舎に燻ぶって終わるのは癪だと歯を剥いてみせると、二十三年連れ添った女房は天を仰いで泣いた。出る芽だかメダカだか知らんがあんた、茶売りの他になんができっと、と女房の苦言は容赦なかったが、沈香も焚かず屁もひらず生きてきたのだ、一生に一度くらい博奕を打っても罰は当たらんだろう、一年もしたら必ず戻って錦を飾るからと並べられるだけのお為ごかしを連ねて、幸田留吉はかろうじてその場を収めた。子供が独立したら店も女房も捨てて心機一転東京で面白可笑しく暮らすのだという十五年前から密かに温めていた本懐を、牛の涎のような洟を垂らした女房に打ち明けるのはさすがに気が引けた。

 講談社 群像 公式サイト:群像2013年12月号
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