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Posted by 中 相作 - 2013.11.01,Fri
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MSN産経ニュース
 平成25・2013年10月27日 産経新聞社、産経デジタル

『貝の穴に河童の居る事』泉鏡花著、石塚公昭人形・写真
 中村隆夫
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『貝の穴に河童の居る事』泉鏡花著、石塚公昭人形・写真

2013.10.27 14:20 (1/2ページ)



「貝の穴に河童の居る事」

 ■写真が醸す滑稽さと幻想性

 石塚公昭のことを単に写真家、人形作家と呼んでしまうと、彼の持つ味わいは伝わってこない。

 彼が制作した人形はバレエ・リュスのディアギレフ、ニジンスキー、コクトー、江戸川乱歩、永井荷風、稲垣足穂、澁澤龍彦、寺山修司、谷崎潤一郎、三島由紀夫等々で、実に個性豊かな人たちだ。彼は単に肖像的人形として提示するのではなく、その芸術世界を最もよく示し得るシチュエーションと結びつけて写真に撮る。ここに石塚の際立つ個性がある。

 今回の本は、泉鏡花の晩年の作品『貝の穴に河童の居る事』の抜粋と彼の写真とのコラボである。粗筋はこうである。

 河童が海に行楽に来ていた妙齢な婦人に見つかり、マテ貝に逃げ込んだが、その一行の男にステッキで突かれて左腕を骨折してしまった。河童はあだ討ちをしたいと思い、姫神様にお願いする。若い漁師が木の鳥居に置いていった「小さな鯨」のような大魚を放り込んで復讐(ふくしゅう)したいと望むのだが、こんな大魚を運ぶには人手が足りない。であれば、彼らを大魚の所まで招き寄せ、狂ったように踊らせればいいとミミズクの女性が提案する。

『貝の穴に河童の居る事』泉鏡花著、石塚公昭人形・写真

2013.10.27 14:20 (2/2ページ)

 この本の醍醐味(だいごみ)は、石塚が制作した河童のいる何点もの写真にあるのはもちろんだ。河童の語り口は「赤沼の若いもの、三郎でっしゅ」といった具合で情けなく、しかも好色で、グロテスク、それでいて愛情を感じずにはいられない。

 河童の話の聞き役である神社の灯ともしの翁には、妖怪は神の零落した姿、鏡花の作品は少々馬鹿にしているのではと不満を抱いたらしい柳田国男の人形が使われている。石塚の凝り性ぶりがここにも窺(うかが)われる。他にミミズクの女性、姫神様、などの人形も登場する一方で、実際の人間、風景などの実写が織り交ぜられている。

 写真には滑稽さと幻想性が十分盛りこまれている。本の帯に「この河童、鏡花にも見せたかった」と書かれているように、異色の作家・石塚公昭が渾身(こんしん)の力を込めた自信作である。(風濤社・2310円)

 評・中村隆夫(多摩美術大教授)
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