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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2013.10.10,Thu

 いつまでも暑くてたまりませんけど、さっそくながら『奇譚』の話題です。


 ちょっとした思いつきを口走ってみたところ、だんだんと妄想がエスカレートして、乱歩生誕百二十年の記念事業としては乱歩の『奇譚』を出版するのがベストではないか、と思いいたってしまいました。

 いま、刊行が待ち望まれる乱歩の本、ということになると、そりゃまあいろいろあると思いますけど、いちばんに指を屈するべき本は? となると、やっぱ『奇譚』じゃね?

 ここで、乱歩蔵びらきの会のみなさんのために、簡単におさらいをしておきましょう。

 『奇譚』ってのは、乱歩が大正5年、早稲田大学在学中につくった手製本です。

 つまり、世界でたった一冊しかない本です。

 この本が初めて全貌を現したのは、昭和最後の年となった1988年、講談社から刊行された江戸川乱歩推理文庫の一冊『奇譚/獏の言葉』によってでした。

 以来、早くも四半世紀が経過したというのに、『奇譚』を最初から最後まで、ちゃんと精読した人間はひとりもいないのではないか、と思われます。

 なぜか、というと、答えは簡単。

 とても読みにくいからです。

 江戸川乱歩推理文庫の『奇譚/獏の言葉』では『奇譚』が全ページ、写真版によって復刻されているだけで、それをいわゆる活字に起こすことがなされていません。

 なおかつ、本文は恐怖のカタカナ表記、でもって英文も少なからず、そんな状態で全二百二十八ページというのですから、読み通すのは難行苦行のひとことです。

 しかし、この『奇譚』一冊が、乱歩の作家像にまったく新しい照明を当てる光源となるであろうことは、ほとんど論をまたないでしょう。

 とはいえ、乱歩蔵びらきの会のみなさんにかんしていえば、やっぱり論が必要だろうなあ。

 というところで、あしたにつづきます。
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