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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2010.12.10,Fri
書籍
 
物語日本推理小説史
 郷原宏
 平成22・2010年11月25日第一刷 講談社
 B6判 カバー 349ベージ 本体2300円
 初出連載:小説現代 2008年9月号ー2010年8月号
 
主要関連箇所
第十六章 乱歩登場
 p193ー205
第十七章 乱歩変身
 p206ー218
 
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第十六章 乱歩登場
 
 1
 
 「これは単なる推理小説ではない」という決まり文句がある。ただ面白いだけの推理小説ではなく、立派な文学になっている、といったニュアンスで使われることが多い。評者は大いに褒めたつもりなのだが、これではちっとも褒め言葉になっていない。なぜならこの世に「単なる推理小説」などというものは存在しないからだ。「単なる音楽」や「単なる絵画」が存在しないように、すべての推理小説はそれぞれ固有な作品であって、断じて「単る推理小説」などではありえない。そんなありもしないものを引き合いに出して、君の作品はそうじゃないよといわれても、作者としては喜ぶわけにはいかないだろう。
 
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第十七章 乱歩変身
 
 1
 
 「ミステリーは醜いものを美しく見せる魔法の眼鏡である」といったのは、「ブラウン神父」シリーズの作者、G・K・チェスタートンである。殺人、流血、死体、腐肉、異常心理など、それ自体としては醜悪で見るに堪えないものが、謎解きを主体とする物語を通じて浄化され、一個の美に生まれ変わる。ミステリーとはそのような美学を内包した文芸だというのである。チェスタートン自身がその美学の最もすぐれた体現者だったことはいうまでもない。
 
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