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Posted by 中 相作 - 2013.08.21,Wed
書籍

〈狂気〉と〈無意識〉のモダニズム 戦間期文学の一断面
 小林洋介
 平成25・2013年2月28日初版第一刷 笠間書院
 B6判 カバー 331+9ページ 本体2800円

関連
第一章 他者の心理を〈科学〉的に〈探偵〉すること──江戸川乱歩「D坂の殺人事件」「心理試験」──
 第三部 モダニティとしての〈無意識〉と〈心身〉> p181-209

第一章 他者の心理を〈科学〉的に〈探偵〉すること──江戸川乱歩「D坂の殺人事件」「心理試験」──

 序

 江戸川乱歩が本格的に探偵小説家として立っていく契機となったと言われる、「D坂の殺人事件」(一九二五年一月『新青年』)「心理試験」(一九二五年二月『新青年』)については、これまで、以下のような視点で分析が試みられてきた。
 第一は、テクストとコンテクスト両面における〈都市〉とその中における〈遊民〉の問題系である。「D坂の殺人事件」や「心理試験」の物語が成立した背景に、地方からの流民を吸収して急速に成長し膨張する東京の様相を見、登場人物に都市の遊民特有の性格を読み取るのが、この種の批評流れである。海野弘「日本の一九二〇年代(九)江戸川乱歩『D坂の殺人事件』」は、「犯罪が都市遊歩者の手によってあばかれていく」という乱歩の初期探偵小説の特性を「一九二〇年代の東京の新しい都市空間の成立」との密接な関係の中に位置づけた。松山巌『乱歩と東京 一九二〇都市の貌』も同じ視点を持ち、当時の東京が、人口が急増し地方からの流民が下宿住まいをする大都市であったことを豊富な資料によって裏付け、そうした都市空間を背景とした物語として乱歩の探偵小説を読み解いている。松山は「D坂の殺人事件」について、「登場人物相互の関係は希薄であり、この希薄さは彼らが出郷者であると、乱歩が設定したためと考えられる」と述べて、見ず知らずの他人同士が行き交う大都会特有の希薄な人間性こそがこの物語の基盤にあることを明確に論じている。

 版元ドットコム:〈狂気〉と〈無意識〉のモダニズム 戦間期文学の一断面
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