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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.11.25,Mon
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Posted by 中 相作 - 2013.08.09,Fri

 ほんとに残暑お見舞い申しあげますけど、それにしても暑い。


 死ぬほど暑い。

 暑いですけど、まいりましょう。

 べつにたいしたネタでもないんですけど、脊椎カリエスになってしまう、というのはどういうことなんだか、私にもおそらく読者にも、あんまりというかさっぱりというか、よくわからないものと思われます。

 じゃあ、ざっとしたところだけでも知るためには、どうすればいいのか。

 とりあえず、梶井基次郎でも読み返してみるか、ってんで、たとえば、昭和2年の「冬の日」はどうか。

 青空文庫:冬の日(XHTML版)

 引用です。

 堯の弟は脊椎カリエスで死んだ。そして妹の延子も腰椎カリエスで、意志を喪った風景のなかを死んでいった。そこでは、たくさんの虫が一匹の死にかけている虫の周囲に集まって悲しんだり泣いたりしていた。そして彼らの二人ともが、土に帰る前の一年間を横たわっていた、白い土の石膏の床からおろされたのである。
 ──どうして医者は「今の一年は後の十年だ」なんて言うのだろう。
 堯はそう言われたとき自分の裡に起こった何故か跋の悪いような感情を想い出しながら考えた。
 ──まるで自分がその十年で到達しなければならない理想でも持っているかのように。どうしてあと何年経てば死ぬとは言わないのだろう。
 堯の頭には彼にしばしば現前する意志を喪った風景が浮かびあがる。

 「土に帰る前の一年間を横たわっていた、白い土の石膏の床」というのはギプスベッドのことですが、そんなベッドみたことすらないのに、そのひえびえとした感触が思い浮かんできそうになります。 

 「自分がその十年で到達しなければならない理想」というのが、平井通にあったのかどうか、とか、思われてこないでもありません。

 あるいは、滋賀県の山村で生活する通の眼には、やはり「意志を喪った風景」が映じていたのかどうか、とか。

 そんなようなことを考えてみると、療養期間中の通の心情にいささかでも接近できるのではないか。

 あるいは、昭和7年の「のんきな患者」。

 青空文庫:のんきな患者(XHTML版)

 吉田は平常よく思い出すある統計の数字があった。それは肺結核で死んだ人間の百分率で、その統計によると肺結核で死んだ人間百人についてそのうちの九十人以上は極貧者、上流階級の人間はそのうちの一人にはまだ足りないという統計であった。勿論これは単に「肺結核によって死んだ人間」の統計で肺結核に対する極貧者の死亡率や上流階級の者の死亡率というようなものを意味していないので、また極貧者と言ったり上流階級と言ったりしているのも、それがどのくらいの程度までを指しているのかはわからないのであるが、しかしそれは吉田に次のようなことを想像せしめるには充分であった。
 つまりそれは、今非常に多くの肺結核患者が死に急ぎつつある。そしてそのなかで人間の望み得る最も行き届いた手当をうけている人間は百人に一人もないくらいで、そのうちの九十何人かはほとんど薬らしい薬ものまずに死に急いでいるということであった。
 吉田はこれまでこの統計からは単にそういうようなことを抽象して、それを自分の経験したそういうことにあてはめて考えていたのであるが、荒物屋の娘の死んだことを考え、また自分のこの何週間かの間うけた苦しみを考えるとき、漠然とまたこういうことを考えないではいられなかった。それはその統計のなかの九十何人という人間を考えてみれば、そのなかには女もあれば男もあり子供もあれば年寄もいるにちがいない。そして自分の不如意や病気の苦しみに力強く堪えてゆくことのできる人間もあれば、そのいずれにも堪えることのできない人間もずいぶん多いにちがいない。しかし病気というものは決して学校の行軍のように弱いそれに堪えることのできない人間をその行軍から除外してくれるものではなく、最後の死のゴールへ行くまではどんな豪傑でも弱虫でもみんな同列にならばして嫌応なしに引き摺ってゆく──ということであった。

 はたして通は、「自分の不如意や病気の苦しみに力強く堪えてゆくことのできる人間」であったのかどうか。

 みたいなことに思いを馳せていただくと、平井通の生涯により深い陰影を感じていただけるのではないかと思われるのですが、紙幅の都合というよりは全体のバランスの問題にかんがみて、「真珠社主人 平井通」に引用することは控えました。

 以上、引用しようと思って準備していたのに結局使用しなかった文献その一、でした。

 つづいて、その二。

 いやいや、その二、ったって、なんかあったっけ?

 暑さのせいで、ぼーっとしてまっていかんわ。

 缶ビール飲みながら考えてこよっと。

 ほな。
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