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Posted by 中 相作 - 2013.07.21,Sun
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平成25・2013年7月18日 朝日新聞社
藤野可織さん 「ホラーは美しさの形態であり笑い」 芥川賞受賞会見
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藤野可織さん 「ホラーは美しさの形態であり笑い」 芥川賞受賞会見
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藤野可織さん 「ホラーは美しさの形態であり笑い」 芥川賞受賞会見
[掲載]2013年07月18日
芥川賞を受賞した藤野可織さん(33)=7月17日
芥川賞を受賞した藤野可織さん(右)と直木賞を受賞した桜木紫乃さん
おなじみニコニコ生放送の中継ブース。今回は、おなじみのパーソナリティー、井上トシユキ氏が遅刻するハプニングも
第149回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞に藤野可織(ふじの・かおり)さん(33)の「爪と目」(新潮4月号)が選ばれた。2009年の「いけにえ」で候補になって以来、2度目で受賞した。透き通るような白い肌がライトに光り、伏し目がちに語った会見の一問一答は、以下の通り。
直木賞受賞の一問一答はこちらから【桜木紫乃さん】
――最初に一言
大変うれしく思います。(自分に)このようなことがあるのかと思って、まだ現実のものとは考えられません。ありがとうございます。
――受賞を誰に伝えたいですか?
両親に、家族に伝えます。
――電話で伝えたんですか?
はい。そんなに長いこと話す時間がなかったんで、「賞くれはったよ」って言いました。
――ご両親はどんなふうに声をかけてくれましたか?
「はよおかえり」とそんなふうに言ってました。
――受賞はどちらでお待ちになりましたか?
新潮社の会議室で待たせていただきまして、編集者さんと映画を見ながら待ちました。最後のええとこになってきたところで電話をいただき、周りにいたみなさんが喜んでくださって、幸せでした。
――何の映画を見てたんですか?
キューバのゾンビ映画で「ファン・オブ・ザ・デッド」という映画です(会場笑い)。
――それは藤野さんが見たかったということですか?
そういうことです。いままで賞の候補にしていただいたときに、(発表を)待つ間に会話に詰まるんで、映画を見て待ってたらいいんじゃないかと思っていて。最初にいただいた文學界新人賞のときは家で待っていたんですが、そのときからホラー映画を見ることにしていました。
――選考委員の島田雅彦さんの選評で、いままでの藤野さんの作品の中で出色の出来と言う話がありました。この作品は藤野さんにとってどのような作品なのでしょうか?
他の作品もそうですけれども、時間をかけて書き、途中まで書いた時点で(編集者に)評価していただくという時間を長く取り、どうしてもきちっとした作品にしたくて、ずっと考え続けてきて、完成したときにはとてもうれしかったです。全力を尽くして書いた小説です。
――書き出しが印象的ですが……
いつも出だしはなるべくさりげなく始めたいと思っていまして、今回もさりげなく始めたつもりだったんですが、確かに今回は特殊な文法(当時3歳の娘が若い女を「あなた」と呼ぶ二人称小説)を使っていて、最初からその文法を使ってちょっとした注釈も説明もなしに進めたので印象的だと思っていただけたのかと思います。
――ニコニコ動画の高橋です。視聴者の方の質問を読み上げます。「人称が特殊です。この書き方にこめた思いがありましたら教えて下さい」
もともとは1年前に書き始めていろいろな書き方を試して、最後にこの書き方に落ち着きました。親しい間柄だけれども心情的に寄り添うわけではなく、あまり良い関係ではないけれども突き放した共感のようなものを書きました。
――デビューされてからご苦労があったということがあれば教えて下さい
デビューしてからそれなりに年月も経っておりまして、その間書き上げられなくて、編集者の方たちにお待ちいただくということがありました。最近は私にしてはそれなりにできるようになって、今後は毎回一作一作、できるだけ前作とは違う作品を書いていきたいです。
――(タイトルが)「手と口」とか「鼻と耳」でもなく、なぜ「爪と目」なんでしょうか?
もともと目には執着がありまして、いままでもどちらかというと目や視力についてちょこちょこ書いてきたんです。自分自身も近眼で目が悪いのがコンプレックスでいろいろ思うところがあって、「目」は小説としては使い勝手があると思っていました。爪は目ほどには書いてないですが、わたしも爪をかんだりする癖があるので、爪にも素材として使うだけのいろいろな情報があるなと思います。
――目はどのくらい悪いんですか?
0.1ないぐらいだと思います。裸眼ではぜんぜん見えません。
――それは子どもの時に目を使いすぎた影響とか?
それがよくわからなくて、目が悪くならないようにとテレビゲームを置かない家庭で、本は暗いところで読んだらあかんと言われていたのですが、小学生からどんどん悪くなりました。
――芥川賞を受けたことはこれからの小説に影響を与えますか?
本当に励みになります。これを励みにこれからもがんばっていきたいと思います。
――今までやってきたことが間違いではなかったということでしょうか?
やってきたことが間違いではなかったと考えたことは実はなくて、その時点で精一杯のことをして、もしそれが(人から)間違っていると言われても自分ではどうしようもないので、間違っているか否かということを気にしてもしょうがないと思っています。
――小説を書く道を選んだかつての自分にかけてあげたい言葉はありますか?
「大人になったら小説を書いているでー」ということです。
――島田氏の選評で、この作品はサイコホラーとしても読めるという話がありました。ホラーマンガもお好きだそうですが、なぜそんな怖い物がお好きなんですか?
ホラーは美しさの一つの形態であると思っていますし、怖いものは笑えます。笑えるものが好きだというのは、たいして珍しいことだとは思ってないです。
――こわいものにはいろいろな面が出てくるからおもしろいということなんでしょうかね?
そういうこともありますし、単に形態的な驚きがあることもあります。
――影響をうけた文学作品は?
その時々で好きな作家は違うんですが、江戸川乱歩の短編とか、内田百閒とか読んでました。文体に関していうと、ほんとにいろいろな文体と小説があっておもしろいんですけど……。すみません、まとまってなくて。
――ベストホラー映画は?
「エクソシスト」ですね。
――藤野さんにとって作家というものは?
うーん。作家という職業になってよかったな。
――最後に一言
今日はたくさんお集まりいただきましてありがとうございました。
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