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平成25・2013年4月23日 毎日新聞社
ウオッチング'13:竹中英太郎・労父子展 乱歩小説などの挿絵で知られる画家、息子のため描いた作品紹介──記念館 /山梨
屋代尚則
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ウオッチング’13:竹中英太郎・労父子展 乱歩小説などの挿絵で知られる画家、息子のため描いた作品紹介--記念館 /山梨
毎日新聞 2013年04月23日 地方版
甲府市の湯村温泉郷。石畳の坂を上ると「湯村の杜(もり) 竹中英太郎記念館」が見える。2004年開館し、江戸川乱歩や夢野久作らの小説の幻想的な挿絵で知られる画家・竹中英太郎(1906~88)の作品を展示。この4月からは60年代以降、英太郎が息子のために描いた作品や資料約230点を並べている。
息子は「反骨のルポライター」の異名を持った竹中労(ろう)(1930~91)。英太郎は、挿絵画家で得た「莫大(ばくだい)な収入と思いもかけぬ虚名」に疑問を抱き、30代前半で絶筆。しかし、ライターや音楽プロデュースなどで活躍する息子から懇願され、約30年の時を経て再び絵筆をとった。
労の妹で同館館長の金子紫(ゆかり)さんによると、県内外から訪れる小説ファンは「(英太郎と労が)親子だとここで初めて知る人も多い」。館内には大きなテーブルがあり、紫さんが無料で茶や菓子を用意。労の著作を手に取ることもでき、ほぼ1日かけて読む来館者もいるという。
同館では、労が登場したテレビ映像も視聴できる。政治家との討論番組で怒声をあびせる兄の映像を見ながら「兄も父も一見恐そうだけれど、ハートがあった」と紫さん。本名の「つとむ」にちなんで「とむ兄ちゃん」と呼んでいた兄の、優しい面影を思い出す。
英太郎も労も、労働運動に傾倒し、弱者に目を向ける社会を理想とした。労が父に絵筆をとるよう頼んだ理由を「尊敬する父を、人々に再び見てほしいと願ったのだと思います」と紫さん。「父の作品がこれだけ残っているのは兄なりの親孝行なんです」と、並ぶ絵画を見やった。
特別展「竹中英太郎・労父子(おやこ)展」は7月15日まで。午前10時~午後4時。火・水曜休。高校生以上300円、小中学生200円。問い合わせは同館(電話055・252・5560)。【屋代尚則】
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