ちょっとした必要から牧逸馬の『血の三角形』、1975年に出た現代教養文庫ですけど、ネット古書店から入手してぱらぱらとひもといたところ、種村季弘の解説「港町のモリタート」に乱歩が出てきました。
引いときます。
敗戦直後の話だそうです。
池袋の駅前通りを旧豊島師範の方へすこし入ったところにコティという喫茶店があった。江戸川乱歩がよく利用していた店で、夏の宵など通りすがりに薄いカーテンの裾からのぞくと、乱歩が編集者らしい人と紅茶の卓を囲んでいるのをよく見かけた。コティの向いには二軒つづきの古本屋があって、その一軒の方に長い間、中央公論社版「浴槽の花嫁」が棚ざらしになっていた。
このブログ、きょうから編集仕様がやや変更されたとのことで、まだ新しい仕様に慣れておりませんゆえ、とりあえず引用段落をブルーの斜字体としてみました。
牧逸馬の世界怪奇実話シリーズは中央公論社から三冊出ていて、タイトルは第一篇が「浴槽の花嫁」、第二篇が「運命のSOS」、第三篇が「戦争とは何だ」。
シリーズの一篇に「生きている戦死者」というのがあって、それが「中央公論」のいつの号に掲載されたのかを確認いたしたく、これは島田荘司さん編の光文社文庫『牧逸馬の世界怪奇実話』にも収録されているのですが、あいにくと初出が明記されておりませんので、現代教養文庫にでもあたってみるかと「生きている戦死者」が収録された『血の三角形』を入手してみたのですが、この本でも判明しませんでした。
ふと思いついて川崎賢子さんの『彼等の昭和』を開いてみたところ、巻末の略年譜で世界怪奇実話シリーズの連載開始は昭和4年10月で、翌年から三年連続して『世界怪奇実話全集』の第一篇から第三篇として刊行されたことが判明しましたが、「生きている戦死者」の初出までは記されていません。
せめて三冊のうちのどれに収録されているのかを知りたいな、と思って国立国会図書館の蔵書をネット検索してみたら第二篇に入ってることが一発でわかり、やっぱ図書館ってのはこうでなくっちゃいけないな、その点、名張市立図書館と来た日にはあなた、なんかもう無茶苦茶なんだぞ、とかゆうとる場合ではありません。
乱歩の生まれた名張のまちが、いよいよ大変なことになてきたあるよぽこぺん。
▼毎日jp:北村酒造:名張の蔵元が廃業、国登録文化財の旧酒蔵解体 歴史的景観「崩れる」惜しむ声 /三重(2013年3月8日)
▼伊賀タウン情報YOU:登録有形文化財「北村酒造」登録抹消へ 名張市(2013年3月8日)
名張市新町、といえばいわずと知れた乱歩が生まれた町であり、その新町にある北村酒造、といえば天保8年創業だそうですから乱歩が誕生したときにはもう営業していた造り酒屋で、世の趨勢には逆らいがたいとはいうものの、廃業を余儀なくされ、さらには解体されて、登録有形文化財の登録も抹消されたうえ、最終的には土地が売っぱらわれてしまう、というのですから大変です。
でもって本日、名張のまちに出かける用事がありましたので、ちよっとながめてきました。
これが正面玄関。
ちがう角度から一枚。
右にみえているのが白壁の酒蔵で、その向こうに位置するのが正面玄関、左にみえる道を画面奥の方向に進んで左に折れると、やがてあやしげな神社みたいな乱歩生誕地碑広場に到着します。
由緒ある建物が手もなくぶっ壊され、歴史的な景観が失われてしまうというのは、じつにさみしいものです。
毎日新聞には、あーこれこれ、あほさんあほさん、でおなじみの名張市教育委員会のコメントが掲載されていて、「残すとしたら行政が買い上げるしかないが、市の財政が厳しく、実現しなかった」とのことなんですけど、とにかく財政難財政難っていってりゃいいんだから、お役人さまはお気楽でよろしゅうございますなあ。
それにしても、名張市のまちなか再生事業がみごとなまでの大失敗に終わってからこのかた、名張のまちにはろくなことがありません。
衰退にはいよいよ拍車がかかってますし、このところ秋祭りといえば雨にたたられてますし。
そうじゃ、これはもう、たたりかもわからんな。
なんのたたりか。
やっぱ、地霊じゃね?
ゲニウス・ロキ、たらゆうてな。
そりゃまあ、名張のまちの地霊が怒り心頭に発するようなこと、名張市は平気でやってきたもんなあ。
てゆーか、地霊以前に、生身の人間であるわしが怒り心頭に発したがな。
いまでも、思い出すだけで、怒りに全身が、わなわな、わなわなと顫えてくるがな。
わなわな。
いかんなあ。
わなわなわなわな。
これはいかんぞ。
わなわなわなわなわなわな。
こんなことではいかんわな。
神さま、名張のまちをお守りください、とかいいながら、お酒飲んでこよっと。
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