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平成25・2013年2月16日 毎日新聞社
シネマの週末:脳男/プラチナデータ 推理小説原作の難しさ
矢部明洋
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毎日新聞 2013年02月16日 西部朝刊
ミステリーの映画化は難しい。文字だけの小説世界なら納得できた設定や描写が、より具体的な映像になった途端、説得力を失ってしまうことがよくある。その難問について考えるのに最適な映画が2本登場した。公開中の「脳男」と3月16日公開「プラチナデータ」だ。
「脳男」は江戸川乱歩賞の同名小説が原作。無差別連続爆破事件の容疑者として、刑事・茶屋(江口洋介)が犯人のアジトで鈴木一郎と名乗る男(生田斗真)を確保する。犯行の異常さから医師・鷲谷(松雪泰子)が男を精神鑑定し、やがて事件の真相が明らかになっていく--。
人気作家、東野圭吾の小説が原作の「プラチナデータ」は、全国民のDNAデータを集めた科学捜査システム構築を目指す科学者、神楽(二宮和也)が主人公。システムの重要関係者が、治療を受けていた病院で殺される。刑事・浅間(豊川悦司)が捜査を担当し、神楽も遺留DNAで事件を解析するが、システムが導き出した犯人は自分だった--。
両作とも題材は脳科学や精神医療。さらに人物設定や展開が、特異な病を抱える主人公-刑事-女医の3人の関係を軸に進む点でも極めて似ている。だが仕上がりは好対照で、「プラチナデータ」の堅実な描写に対し、「脳男」は登場人物たちが脇役にいたるまで強烈に味付けされている。映像化に伴う荒唐無稽(むけい)化を、キャラクターをどぎつくする荒技で乗り切ろうという戦略が見て取れる。監督は「犯人に告ぐ」などの瀧本智行。その狙いに応える俳優陣、特に松雪や二階堂ふみら女優たちの好演が見どころになっている。見比べると、いろいろ興味深い2本だ。【矢部明洋】
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