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平成25・2013年2月15日 読売新聞社
「脳男」…殺人ロボットの「正義」
福永聖二
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(日本テレビ、日活ほか)
冒頭からショッキングな映像に目を覆いたくなる。押さえつけられ、舌を切り取られる。
その女性が許しを請うような目でよたよたと路線バスに乗り込むと、突然、バスが爆発する。女性は体に爆弾を巻かれていたのだ。
並はずれた知能と肉体を持ち、生まれつき感情がない男。それが生田斗真が演じる「脳男」だ。刑事の茶屋(江口洋介)から爆破事件の犯人と疑われた彼は、精神科医・真梨子(松雪泰子)の精神鑑定を受ける。無表情で何を考えているのか分からない難しいキャラクターを、生田がクールに演じている。
幼い頃に両親をひき逃げ事故で失い、大富豪の祖父に育てられた少年は、心がゆがんでしまった祖父から、「世の中の悪を殲滅せんめつするのがお前の使命だ」と教えられ、正義のために犯罪者を倒す殺人ロボットになっていた。
首藤瓜於しゅどううりおの江戸川乱歩賞受賞作を、「犯人に告ぐ」などの瀧本智行監督が映画化した。映画賞を総なめした「八日目の蝉せみ」を監督した成島出いずるが、真辺克彦と共に脚本を担当。撮影監督に、ハリウッドで活躍し、ロバート・アルトマン作品などを手がけている栗田豊通を迎えた重厚な布陣だ。
犯人との駆け引きよりも、見た目を重視したのだろう。冷酷、残虐な二階堂ふみ演じる犯人の意図は最後まで理解できないが、異常性が強調され、衝撃度は確かに高い。ホラー映画には分類しにくいけれど、それに近い雰囲気で、新感覚の恐怖映画と言えよう。2時間5分。新宿バルト9など。(編集委員 福永聖二)
(2013年2月15日 読売新聞)
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