ですからまあ、乱歩にかんしてなにを期待していただきましても、なにしろここ名張市は……
とか思っていたら、わが名張市、結構流行に敏感じゃん。
2ちゃんねるでも大人気。
▼ニュース速報+:【社会】 女子中学生、授業中に携帯電話さわり先生に注意されるも無視→授業終了後、先生が頭叩く→問題に…三重(2013年2月14日)
うーむ。
名張市の土地柄が浮き彫りにされた事案、といえるかもしれません。
どうじゃ。
いろんな意味であれな土地柄じゃろう。
頭を平手で一発叩くくらいじゃ、いっこうにどうしようもない土地柄なんだぞ。
ですからまあ、名張市立図書館もですね、とてもご期待に応えられそうにないわけです。
なにも考えようとしないんですから、なにもできるわけがありません。
乱歩関連資料を収集するといったって、なにを集めていいんだかわかんない。
集めたものをどうすればいいのかもわかんない。
そもそも、市民生活にまったく関係がなく、市民から求められてもいない乱歩関連資料なんてのを、いったいまたどうして集めなきゃなんないのか、そのあたりのこともわかんない。
いくらお手本を示しても、側面からアドバイスしてみても、なにも考えようとしないばかりか、主体性をあっさり放棄して知らん顔を決めこんでしまう。
日本という国が衰退と縮小の時代に入ってるんだから、そのあたりのことも踏まえて乱歩関連資料の収集そのものを見直すべきなんじゃね? というのはもはや自明のことだと思われるんですが、それもできない。
これまでに収集した資料を死蔵するだけではなく、それがどれだけの価値をもっているかを確認し、価値あるものとして正当に活用してゆく、みたいなこともできない。
とにもかくにも、主体性を弊履のごとくあっさり放棄し、乱歩のことはやってくれるひとがあったらやってもらいます、なんてことじゃどうしようもないわけです。
この先いったい、どうなるんでしょうか。
どうなるもこうなるもないとは思いますけど、それはまあそれとして、名張市長からお墨つきを頂戴して手前が鋭意進めておりますデータベースづくりというのは、いまさらここにいうまでもなく、名張市立図書館がこれまでに収集した乱歩関連資料にどれだけの価値があるか、つまりそんな資料は全国で名張市立図書館しか所蔵していないわけですから、名張市民には無縁であっても、全国に視野をひろげ、価値ある情報として発信してゆけばおおいに有用で名張市の株もうなぎ登り、ということになるはずのプロジェクトの第一歩なんですけど、いっぽうでこれは、私にとって自分の尻ぬぐいでもあるわけです。
つまり、名張市立図書館の三冊の目録ではカバーできなかった範囲を、ちゃんとカバーして尻ぬぐいする、という作業でもあるわけです。
たとえば、乱歩の対談や座談会のたぐいがそうです。
光文社文庫版乱歩全集の『探偵小説四十年』上下には、もちろん巻末の目録も収録されていて、すなわちこの目録こそ、名張市立図書館が乱歩関連資料を収集しようと思いついたとき、とりあえず眼を通すべきだった目録なんですけど、元版にあったそのままを収録したのではなくて、綿密な訂正が加えられています。
そのあたりの事情は上下それぞれの「解題」で説明されていますが、下巻ではこんなぐあい。
元版の目録には非常に誤脱が多いが、この目録からの孫引によると思われる誤った書誌的データもよく見かけるので、誤謬の源流を示す意味でもあえてほぼ原文のままとし、下段に必要最小限の訂正を註記してある。これらの訂正は、ほとんど全面的に、江戸川乱歩リファレンスブック2『江戸川乱歩執筆年譜』(平成十)、同3『江戸川乱歩著書目録』(平成十五、ともに名張市立図書館発行)を典拠とした。
いやほんと、名張市立図書館も、というか、名張市も、この当時は乱歩関係者のみなさんからそこそこ高い評価を頂戴していたんですけど、いまじゃ旅寝の三度笠、人生裏街道の枯れ落葉か。
そんなことはともかくとして「解題」に戻りますと、さらにつづけてこうあります。
「講演」「座談会・対談会」「ラジオ」「テレビ」の確認は不充分である。
ま、流れからいえば、そのあたりの確認も名張市立図書館がやってよね、みたいなことになるわけであって、じゃ、そのあたりも尻ぬぐいとしてやっとかないとな、と私は思ってるわけです。
とくに対談や座談会では、出席者のうちつけな本音が語られるケースが少なからずあって、こうした肉声はただ面白いというにとどまらず、乱歩のことを研究しようというひとにとっては得がたい素材ということになります。
名張市がらみのことでいいますと、昭和31年に発表された「二銭銅貨」という随筆があって、乱歩生誕地碑が建立されたとき、発起人筆頭だったひとが「同地の菓子屋さんに名張名物、乱歩せんべい『二銭銅貨』というものを製造販売させ、除幕式の参列者にこれをお土産として出したし、駅の売店でも売らせることにした。私は昔とちがってそういうことをいやがらぬ性格に変っている」と乱歩は記しています。
しかし、やはり昭和31年のまったくおなじ時期、「酒」という雑誌に掲載された座談会では、「こんど故郷の三重県にぼくの碑を建ててくれたんだが、そこで『乱歩せんべい』を売出してるんだよ。しかもぼくの作品の「一(ママ)銭銅貨」というのからとったんだろうが、せんべいの大きさもその大きさでね。まったくかなわんね」と乱歩は述べています。
つまり、「まったくかなわんね」というのが、座談会だからこそ口をついて出た乱歩の本音だったわけで、ささいなものではありますけれど、乱歩の人物像に一歩近づく手がかりといっていいのではないかと思われますが、この手の対談や座談会は多くが初出だけで埋もれてしまい、本のかたちで出版されることがめったにありません。
だからこそ、たとえば名張市立図書館なら名張市立図書館が、乱歩の目録をもとにして丹念な調査や確認を進めるべきなんですけど、というところで本日のお客さんがご到着のようです。
あとはまたあした。
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