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Posted by 中 相作 - 2012.12.31,Mon

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 平成24・2012年10月23日 メディアファクトリー

 

闇夜を楽しむためのブックガイド

 朝宮運河

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闇夜を楽しむためのブックガイド

    

2012年10月23日(火) 19:00

 

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 闇夜にはたくさんの扉が隠れている。見たこともない奇妙な世界、これまで味わったことのない感覚、大自然や年の知られざる姿――。ここではそんな夜の扉に通じる9冊を紹介しよう。明るい太陽の下では出会うことのできない、懐かしく、豊かで、ちょっと不気味な物語がひっそりあなたを待っている。

 

 

■夜の聖域で、神秘の力に触れる! 『鍛える聖地』(加門七海/メディアファクトリー)

日本各地に点在する無数の聖地。古来、宗教者たちが守りつづけてきたパワー溢れる12のスポットを、宗教・オカルトに造詣の深い著者が体当たりレポート。山や森、湖や島が発する霊威を臨場感たっぷりに伝えてくれる。八王子の今熊山では中野純氏とともにミッドナイトハイクに挑戦。深夜の大自然が、昼とはまったく異なる顔を覗かせている。富士の樹海で怪音に迫られるなど、「視える」作家ならではの恐怖エピソードも読みどころだ。

 

■闇夜の楽しみ方を丁寧にガイド 『闇と暮らす。 夜を知り、闇と親しむ』(中野 純/誠文堂新光社)

視界が閉ざされる闇夜では聴覚、臭覚、味覚、触覚が鋭敏になる。闇歩きガイドとして知られる著者が、豊富な体験をもとに教えてくれる闇夜の魅力、ナイトハイクの楽しみ。キノコやホタルといった発光生物の観察、星と地図を照らし合わせてのルート確認、天体観測など、知的なアウトドアとしての闇歩きを紹介している。慣れるまで難しい闇写真撮影のテクニックも掲載。初心者でも安心して闇夜のハイキングを始められる。

 

■忘れていた夜への怖れが蘇ってくる絵本 『こっそり どこかに』(軽部武宏/長崎出版)

どこかに忘れてきてしまった玩具のロボットの片足を見つけるため、男の子は日暮れの町を駆けていった。彼の前に現れるのは、川辺の柳に浮かぶ顔、工場の煙突をよじのぼる黒い影、夕映に翼を拡げる巨大なコウモリ――。刻一刻と夜のしじまが降りてくる東京の下町にこっそり姿を見せるあやかしたちを、子どもの目線で描いた怪談絵本。暗い物陰には何かが潜んでいると信じていた、幼い頃のあの感覚が蘇ってくる。

 

■夜なら伝えられる秘めた思い 『夜のピクニック』(恩田 陸/新潮文庫)

全校生徒が夜を徹して80キロを歩き続ける恒例行事「歩行祭」。高校3年の貴子は誰にも言えなかった思いを胸に、ある小さな賭けをした。夜を歩くという非日常的な行為の中で見えてくる高校生たちの秘められた思い。かけがえのない一夜の事件を描いた青春小説。

 

■奇怪なカーニバルの正体は? 『何かが道をやってくる』(レイ・ブラッドベリ:著、大久保康雄:訳/創元SF文庫)

ハロウィーンを目前に控えたグリーン・タウンにカーニバルがやって来た。謎の男・ダークに率いられた真夜中のカーニバルは、町の大人たちの様子を変えてしまう。13歳の少年・ジムとウィルは町を救おうと奔走するが――。抒情怪奇の詩人・ブラッドベリの代表作。

 

■月光の妖術が巻き起こす悲劇 『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション1』(江戸川乱歩/角川ホラー文庫)

小説家の「私」は動物園で奇妙な青年に声をかけられた。彼が語って聞かせたのは、夜のビル街で起こった奇怪な事件の顛末。「月光の妖術」を描いた「目羅博士の不思議な犯罪」ほか、乱歩のミステリーには妖しのものがうごめく夜の大都会がたびたび登場する。

 

■昭和20年代の闇にひそむもの 『魍魎の匣』(京極夏彦/講談社文庫)

孤独な少女・楠本頼子は、独特の存在感をもった美少女・柚木加菜子に声をかけられ、夜更けの町を彷徨うようになる。しかし、加菜子が駅のホームから突きおとされ、散歩は突如終りを告げた――。印象的な夜のシーンがいくつも描かれる、長編妖怪ミステリー。

 

■懐かしい夢のような夜の市場 『夜市』(恒川光太郎/角川ホラー文庫)

あらゆるものが手に入る幻の市・夜市。幼い頃、野球の才能と引き換えに、弟を差し出してしまった裕司は、全財産を手に夜市を訪れる。裕司は弟を買い戻すことができるのか。異界の者たちが集う夜市のにぎわいを、ノスタルジックに綴った著者の伝説的デビュー作。

 

■真夜中の冒険で見つけた幻の庭 『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス:作、高杉一郎:訳/岩波少年文庫)

退屈な夜を過ごしていたトムは、真夜中にホールの大時計が13回鳴りひびくのを聞いた。夜の冒険に出かけたトムは、邸宅の裏に美しい庭を見つける。それは朝になると消えてしまっていた――。少年の恋と成長を、幻の庭を舞台に描いた英国児童文学の傑作。

 

選・文=朝宮運河

(『Mei(冥)』vol.1創刊号特集「闇を歩く 闇夜を楽しむためのブックガイド」より)

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