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Posted by 中 相作 - 2012.10.23,Tue

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ゲンダイネット

 平成24・2012年10月19日 日刊現代

 

奥山和由映画プロデューサーが振り返る若松孝二監督

 Home > 芸能 > 記事

 

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奥山和由映画プロデューサーが振り返る若松孝二監督

 

2012年10月19日 掲載

 

逆風が吹けば吹くほど素晴らしい作品を生み出した

 

20121023a.jpg

 

<当初「キャタピラー」の主演は杉本彩だった>

 

 日本映画界が誇る名監督が亡くなった。若松孝二。享年76。鬼才の名をほしいままにした監督との思い出を、映画プロデューサーの奥山和由氏が振り返る。

 

 チャールズ・ブロンソンのような見た目通り、豪放磊落(らいらく)を絵に描いたような人物でした。でも、計算もなく無謀なことに突き進むタイプではありません。

 僕とは「エロティックな関係」「寝盗られ宗介」(ともに92年)などを製作。頓挫しましたが、谷崎潤一郎の「痴人の愛」を永瀬正敏主演で映画化しようと動いたこともありました。

 若松さんに突然、風が吹いたのは「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(08年)がきっかけでした。この作品を撮った理由は、同じテーマを題材にした映画「突入せよ!あさま山荘事件」(02年)を見て、警察サイドからしか事件が描かれていないことに憤慨したため。連合赤軍を内部から描いた異色作でしたが、ベルリン国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞。映画はヒットし、若松さんの評価は国際的にも高まりました。

 主演の寺島しのぶがベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した「キャタピラー」(10年)にも思い出があります。実はこの作品、僕と若松さんが江戸川乱歩原作の「芋虫」を題材に映画化を進めていたものなのです。当初、主演は杉本彩でした。ところが、女性の脚本家が書いたシナリオを読んだ若松さんが「反戦(のテーマ)が入っていない」とダメ出し。自分で書くと言い出しました。そうこうするうちに時間が経過。今度は杉本サイドが出演に難色を示して空中分解してしまったのです。

 それから3、4カ月たった頃、風の便りで映画関係者から「若松さん、寺島しのぶで『芋虫』撮ってるらしいよ」と聞き、「エッ!?」と声が出るほど驚きました。

 若松さんは「自分が作ると決めたら絶対に作る」という信念の人。製作費がなければ、自宅を抵当に入れて工面したり、実の娘に借金したり。でも、そんな逆風が吹けば吹くほど素晴らしい作品を作る。「やりたい作品をまっすぐに追求すればいい作品が出来る。そういう作品はお客も入る。儲けようなんて思ってたら損をする」と語っていたものです。

 不屈と反骨が若松監督の真骨頂ですが、そこには自分の才能への自負と、したたかな計算もあったと思います。

 だからなのか、若松作品は金銭やスタッフに恵まれた時は傑作が少ない。謹んでご冥福をお祈りします。(談)

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