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平成24・2012年10月2日 産経新聞社、産経デジタル
東京ステーションホテル よみがえる風格、モダン、もてなし
今泉有美子
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【大人の時間】
2012.10.2 14:54 (1/4ページ)
丸屋根ドームに沿ってレイアウトされたユニークな客室「ドームサイド」。人々の行き交う姿を窓から眺めることもできる(3万8115~5万6595円、2名1室)
≪文豪に愛され、名作の舞台に≫
約5年に及ぶ復元工事が終了し、創業当時の風格ある姿でよみがえったJR東日本・東京駅の丸の内駅舎。同時に改修工事が行われていた「東京ステーションホテル」も、あす10月3日にグランドオープンを迎える。日本の中心地・丸の内で、ほぼ1世紀にわたって世界中の賓客をもてなしてきたホテルは、どのように生まれ変わったのだろうか。一足先に館内へと入り、完成間もないホテルの魅力を探った。
■ゆったり広々、独特の景観
東京駅丸の内駅舎の中に入る東京ステーションホテルは、駅舎の総面積の約半分を占めている。東京駅直結という利便性はもちろん、ホテル内からは皇居の緑や丸の内のビル群、線路を走る電車など、ほかにはない景色が楽しめるのも魅力だ。
4階建ての施設内には、スイートルームを含めて150の客室が作られた。標準的な客室でも約40平方メートルの広さを誇り、ラグジュアリーホテルを意識したゆったりとした設計が自慢。また2階建てのメゾネットタイプや東京駅を象徴する丸屋根ドームに沿ってレイアウトされた客室など、駅舎の特製を生かしたインテリアデザインの部屋も作られている。
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そして最上階の4階部分には、新たに宿泊客だけが利用できるゲストラウンジ「アトリウム」がオープン。駅舎の外観を思い出させる三角形の天窓が作られ、柔らかな自然光がラウンジ全体を包み込む。午前中は本格的な朝食が楽しめるほか、ライブラリースペースやミーティングルームも併設。広報担当者は「天窓から差し込む自然光に包まれながら、ゆったりと朝食をお召し上がりいただけます」と話している。
■伝統と新装、名店も「復活」
館内に入るレストランやバーも、伝統を受け継ぎつつ新たな装いで生まれ変わった。大正時代から続く精神を受け継ぐフレンチ「ブラン ルージュ」では、現代的なエッセンスを添えた本格的なフランス料理が楽しめる。また、東京ステーションホテルの象徴だった長い歴史を持つバー「オーク」も同じ名前で再開。名バーテンダーとして活躍し、東京ステーションホテルの名前を広めるきっかけにもなった杉本寿氏が、新たなバーでもカウンターに立つ。杉本氏は「これまでいらしてくださっていたお客さまはもちろん、新たなお客さまにも居心地のよいお店を目指したいと思っています」と意気込みを話す。
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ホテルの1階部分には、松屋銀座のコンセプトショップ「松屋 東京丸ノ内」がオープン。傘やストールといった厳選された婦人雑貨のほか、日本の職人技が生きた革製品やガラス製品、ジュエリーなどを展開する。松屋の取締役執行役員、古屋毅彦氏は「日本の伝統工芸が生きた雑貨は、松屋銀座がずっと得意としてきたジャンルです。東京駅から日本の“粋”を世界に発信できればと考えています」と説明している。
東京ステーションホテルは1915年に開業し、日本の中心地で各地から東京に訪れる賓客をもてなしてきた。大戦中に駅舎が戦火を受けたために休館したが、1951年に再開。その際に女性スタッフ70人を募集したところ、1000人を超える応募が殺到。当時から国民の憧れのホテルとして注目を浴びていたようだ。
西洋の様式を取り込んだモダンな内装のホテルは多くの文豪にも愛され、文学の世界にもたびたび登場している。その代表は、江戸川乱歩(1894~1965年)の「怪人二十面相」だ。明智探偵と外務省の役人に変相した怪人二十面相が、“東京鉄道ホテル”の室内でやりとりする場面が描かれている。
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■川端康成も客室で執筆
また、川端康成(1899~1972年)は1956年に317号室に滞在し、「女であること」を執筆。小説には『市子は驚いた。窓の金網から乗車口が真下にながめられる。改札口にひっきりなしに人の出入りするのが正面に見える。思いがけぬところにホテルの部屋があるものだ』という一文がある。
多くの人に愛され、丸の内の中心で街の発展を見守ってきた東京ステーションホテル。姿を変えてよみがえった今も、変わることなく東京を訪れる人々をもてなし続けるのだろう。(今泉有美子/SANKEI EXPRESS)
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東京ステーションホテル
東京都千代田区丸の内1の9の1 (電)03・5220・1111(代表)
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