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平成24・2012年9月28日 産経新聞社、産経デジタル
第58回江戸川乱歩賞贈呈式(13日、東京・内幸町の帝国ホテル東京)
海老沢類
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第58回江戸川乱歩賞贈呈式(13日、東京・内幸町の帝国ホテル東京)
2012.9.28 09:03
第58回江戸川乱歩賞贈呈式
■みんなで告白すれば怖くない!?
口に出すのがはばかられるだけで、世界文学の傑作というのは意外に読まれていないのかもしれない。長くて難渋なら、なおさらだろう。作家、高野史緒(ふみお)さん(46)の第58回江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)受賞作「カラマーゾフの妹」(講談社)は、ロシアの文豪、ドストエフスキーの代表作「カラマーゾフの兄弟」の続編という形で書かれた異色のミステリー。贈呈式は、本編「-兄弟」の読書体験をめぐる“告白大会”になり、出版関係者500人が集った会場は何度も笑いに包まれた。
5月の発表会見で、本編を未読であることを明かした日本推理作家協会理事長の東野圭吾さん(54)が「この受賞によって、私が(「-兄弟」を)読んでいないことを世間に公表することになった。似たような作品を応募する人は、どうか気をつかっていただければ…」と口火を切ると、次にマイクの前に立った講談社の野間省伸(よしのぶ)社長(43)が「私は理事長よりは“ちょっと上”で、途中までは読んでいます」と受ける。
「実は私も挫折しまして…」。2人に続いて読了できなかったことを告白したフジテレビの大多亮(とおる)常務(53)は「映像で言えば(第3作までの)『ゴッドファーザー PART4』を作るくらいすごいこと。何より勇気がいるし、ハードルも非常に高い」と高野さんの志をたたえた。
高野さんは受賞前から活躍するプロ作家らしく「昨年の震災で、人間はいつ死ぬか分からないと実感し、どうせなら心に引っかかってきた賞に応募してから死にたい、と。乱歩賞の名を汚さぬよう今後も精進していきたい」と落ち着いたあいさつ。300ページ強のミステリーに仕上がった続編を入り口に、名作に再挑戦する人が増えるかもしれない。(海老沢類)
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