名張市が満を持して世に問う乱歩関連事業の乱歩狂言、ありがたいことに平山雄一さんのブログでご紹介いただきました。
▼平山歯科医院日記:創作乱歩狂言「押し絵と旅する男2012」(2012年8月24日)
先日も記しましたとおり、乱歩や狂言に興味のあるみなさんには、乱歩作品にもとづいた異色の狂言としてお楽しみいただけるものと思います。
異色の、というのは、狂言なのに笑いをとりに行かない、という点を指しての形容なのですが、初演にくらべると笑いの要素にも配慮がなされているとのことで、「押絵と旅する男」で笑いに配慮してどうすんだよ、とは思いますけど、白石加代子さんの百物語シリーズで演じられたときには、風船屋が粗相したあたりで客席にどっと笑い声が生じていましたから、今回のバージョンでも意外な笑いが生まれるのかもしれません。
どうぞよろしくお願いいたします。
平山さんに心からお礼を申しあげつつ、幻影城プロジェクトの乱歩コーナーリニューアル大作戦に移ります。
おとといお知らせしましたとおり、乱歩ファンのかたからメールでご意見をお寄せいただきました。
引用いたします。
いっそのこと、乱歩コーナーから、日本推理作家協会賞受賞作と乱歩賞受賞作とその作家の色紙を撤去してしまったら、いかがでしょうか。
どちらの賞も乱歩が作った賞ですが、なにぶん狭いコーナーですから、いっそのこと乱歩の本や特集雑誌、またいわゆる乱歩本・乱歩小説をずらっと並べてくれれば(乱歩マンガ→乱歩の自著箱にもマンガはありましたし→もできれば)、八度名張を訪れた私にも、また乱歩コーナーを観てみたいと思わせてくれると思うのですが。
日本推理作家協会賞と乱歩賞の受賞作品がどうして乱歩コーナーで幅を利かせているのか、というのは当然の疑問で、なにがなにしてこんなことになっているのか、私にもよくはわからないのですが、乱歩がつくったふたつの賞の受賞作品、ということになると、乱歩関連資料の収集ったってなにを集めていいのかさっばりわからない、という名張市立図書館でも容易に収集できる、ということがあったのかもしれません。
乱歩がつくった賞の受賞作品を集める、というのはそれなりの名分にはなりますし、作品をいっさい読まなくたって機械的に集められます。
だからついつい幅を利かせることになってしまったのかと思われる次第なのですが、なにしろ乱歩コーナーなんですから、乱歩以外の作家の著作が幅を利かせるのはおかしい、というのは小学生にだって理解できる理屈だと思われます。
おおざっぱに優先順位をつけるならば、まずは乱歩の本、それから、乱歩以外の人間が乱歩のことを書いた本、そのあとようやく、乱歩がつくった賞を受賞した本、ということになるはずで、いったいなにを考えて乱歩賞受賞作品をガラスケースに入れて展示する、みたいなことになったのか、ほんとによくわかりません。
なんといっても図書館のなかのスペースなんですから、あくまでも本というものに重点を置いて、壁面一面をつかって乱歩の本の表紙をみせる、くらいのことは最初からやっておくべきだったと思われます。
つまり壁一面、仕切りのある標本箱みたいにして、仕切りごとに一点ずつ、表紙がみえるように乱歩の本を並べてゆく、みたいなのはそこらの文学館でよくみられる展示手法ですが、どうして乱歩コーナーを設計したとき、そういったアイデアが盛りこまれなかったのか。
本の展示はむしろ二の次で、乱歩の遺品や色紙、短冊、掛軸、書簡、あるいは写真、さらには乱歩賞受賞作品あたりが展示の柱とされ、かんじんの乱歩の本はガラス戸つきの本棚に背をみせて並べられているだけ、というのが乱歩コーナー開設当初の姿で、のちにコーナーの中央に本棚が追加されて現在にいたる、みたいなことになっています。
したがって、「乱歩の本や特集雑誌、またいわゆる乱歩本・乱歩小説」「乱歩マンガ」をずらりと展示せよ、というのはごくまっとうであたりまえのご意見なのですが、どうしてそんなあたりまえのことができていないのか、ふしぎといえばとてもふしぎです。
このかたからは追加のメールもいただいていて、こんなご意見も頂戴しました。
名張市立図書館が乱歩関連文献の収集を継承するならば、映画・演劇などのパンフレットを展示するのも、良いと思います。
さらには、ポスターや宣伝材料みたいなものも、当然ありでしょう。
しかし、現在の乱歩コーナーは、本来は展示のためのコーナーではあったのですが、いつのころからか収蔵のためのスペースにもなっていて、かなり雑然とした印象を帯びてしまっています。
「また乱歩コーナーを観てみたい」とリピーターに足を運んでいただけるような状態では、残念ながらまったくありません。
それに、そうした展示は、乱歩が生まれた新町にこそふさわしいとも考えられます。
25日土曜日の午後、炎天に焼きつくされて死に絶えたような名張のまちを歩く機会があったのですが、名張市立図書館は名張のまちを散策する動線から大きくはずれている、ということをあらためて実感させられました。
かえすがえすも残念なのは、みごとなまでの大失敗に終わった名張市のまちなか再生事業において、乱歩が生まれた新町に残る蔵をどうして乱歩がらみで活用しなかったのかという一事であって……
いやいや、くりごとを並べてみてもいたしかたありません。
とにかく、頂戴したご意見は、乱歩コーナーでは乱歩の本をみせることに軸足をおけ、と要約できると思われますが、その前提になっているのは、乱歩コーナーを存続させるべし、というご意見であり、ということは、先日も申しましたとおり、名張市立図書館は乱歩コーナーという看板を掲げつづけるべし、ということであって、そうなりますと、乱歩の看板を掲げた図書館が乱歩のことを知らない、なんてことはとても通用しませんから、乱歩のことを知る、とか、乱歩作品を読む、とか、そういったことが名張市立図書館に求められることになって……
いやはや、またしてもくりごとになってしまいました。
ご意見のメールをくださった乱歩ファンのかたにお礼を申しあげて、本日はおしまいといたします。
Powered by "Samurai Factory"