新聞：視覚の快楽 乱歩が描く夢の造園法

新聞

 

日本経済新聞

　平成22・2010年5月16日　日本経済新聞社

 

視覚の快楽　乱歩が描く夢の造園法

　高山宏

　20面〈読書〉> 連載コラム〈半歩遅れの読書術〉

 

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視覚の快楽　乱歩が描く夢の造園法

 

高山宏　　

 

　いろいろ無理無体な大学改革の大騒ぎでもみくちゃになったのも、一息入ってみると、30年もやった英文学教師から、いつのまにか別大学で視覚文化を手掛りにする近代日本文化史を講義する身になっている。普通なかなかあり得ない「転身」だが、江戸川乱歩の存在あればこそというお話。乱歩旧邸公開の便利あって近傍の立教大学で何年か教えさえしたのである。

　未曽有の経済不況と「猟奇的」（作家佐藤春夫の造語）な文化相ということで今現在に直結する大正から昭和初年を教えるのが一番面白くて、身も入る。乱歩の世界的傑作『パノラマ島綺譚』（1926）は即ち昭和初年刊ということだから非常に象徴的な作品だ。