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Posted by 中 相作 - 2014.05.26,Mon
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 平成26・2014年5月22日 産経新聞社、産経デジタル

大阪松竹の薄暗い書庫で見つけた“宝の山” 出ずっぱり、市川染五郎の挑戦
 亀岡典子
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【ベテラン記者のデイリーコラム・亀岡典子の恋する伝芸】

大阪松竹の薄暗い書庫で見つけた“宝の山” 出ずっぱり、市川染五郎の挑戦

2014.5.22 16:30 (1/3ページ)[ベテラン記者コラム]



「伊達の十役」で、染五郎扮する仁木弾正の幻想的な宙乗り=東京都中央区の明治座

現代の歌舞伎作りに取り組む

 今月、市川染五郎が、東京・明治座で大奮闘を繰り広げている。

 昼の部は、「釣女(つりおんな)」の太郎冠者、「邯鄲枕物語」の艪清(ろせい)と2作の主役を勤め、夜の部は「伊達(だて)の十役」で口上の本人役を含めると全十一役というから、昼夜ほぼ出ずっぱりの熱演である。しかも、「邯鄲枕物語」も、「伊達の十役」も、自身が熱望して取り組んだ作品である。渾身(こんしん)の公演というべきであろう。

 気品ある端正な顔立ちで貴公子的な雰囲気のある染五郎だが、歌舞伎への情熱はあふれるほどで、つねに強い意志で現代の歌舞伎作りに取り組んできた。

 古くは、「小笠原騒動」や「怪談敷島譚(しきしまものがたり)」の復活に始まって、「細川の血だるま」を、当時ブームを呼んでいたボーイズラブの世界を取り入れて「染模様恩愛御書(そめもようちゅうぎのごしきいん)」として上演、片岡愛之助との男同士のラブシーンに客席の女性たちから熱いため息がもれた。

 その後も染五郎の快進撃は続く。東京・渋谷のパルコ劇場では三谷幸喜の新作歌舞伎「決闘!高田馬場」、国立劇場では江戸川乱歩の世界を江戸時代に置き換えた“乱歩歌舞伎”を創造、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」も3部作にして同名歌舞伎化。上方喜劇を歌舞伎にし、最先端の笑いのセンスを生かした「大當(おおあた)り伏見の富くじ」など、実に多彩な仕事ぶりである。

大阪松竹の薄暗い書庫で見つけた“宝の山” 出ずっぱり、市川染五郎の挑戦

2014.5.22 16:30 (2/3ページ)[ベテラン記者コラム]

古典との両立

 しかもそれらすべては、古典歌舞伎との両立の上に成し遂げられている。父・松本幸四郎の高麗(こうらい)屋の芸、叔父・中村吉右衛門の播磨(はりま)屋の芸を謙虚に継承する姿勢も忘れない。一昨年は、花形世代で上演された「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」の通し上演(東京・新橋演舞場)で、主役の大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)を演じた。彼が花形世代のリーダーであることを証明した配役のように思えた。

 染五郎は若いころ、大阪に来ては、道頓堀近くの大阪松竹の薄暗い書庫にひとりこもって時間を忘れ、昔の歌舞伎の台本を読みふけっていたという。長く日の目を見ない本はほこりをかぶっていたであろう。しかし、それらは染五郎にとって宝の山に見えたのだ。

 その中から現代に再生できるもの、自分がやりたいものを発掘・研究し、いまの時代のテンポやセンスを取り入れ、舞台にかける。染五郎の至福の瞬間であったに違いない。

いつかは自分で脚本も

 かつて染五郎にインタビューした際、発言に驚いたことがある。

 将来の自分は何をしていると思うか?との質問に、「歌舞伎の本を書いている」と彼はかみしめるように答えた。「自分が書いた歌舞伎の台本がズラーッと図書館や書店に背表紙を見せて並んでいるところを想像するんです。『市川染五郎全集』みたいにね」

 自分が書いて演出して主役を勤める。いつかそんな日が来ると、彼の仕事ぶりを見ていると信じられる。

大阪松竹の薄暗い書庫で見つけた“宝の山” 出ずっぱり、市川染五郎の挑戦

2014.5.22 16:30 (3/3ページ)[ベテラン記者コラム]

 さて、「伊達の十役」だが、この作品は三代目市川猿之助(現・市川猿翁)の復活狂言中、最高傑作である。立役(たちやく)、女形、善人、悪人まじえ、なんと四十数回にも及ぶ早替(はやがわ)りで十役を演じ分ける。ドラマをしっかり見せながらも、宙乗りをはじめ、江戸歌舞伎の残照ともいえるケレンの演出がたっぷり盛り込まれ、第一級のエンターテインメントに仕上がっている。

 染五郎はこの作品に憧れ続け、ついに今回挑むことになった。すべて猿翁の演出を踏襲して臨んでいるという。それは、復活狂言や新作歌舞伎に取り組んできた染五郎だからこそ感じられる偉大なる先輩への敬慕の証なのかもしれない。

 劇中、染五郎ふんする妖術使いの大悪人、仁木弾正(にっきだんじょう)が宙乗りで妖しく宙を歩いていくのを見上げるとき、ふと二人の魂が重なり合ったように思えた。



亀岡典子
産経新聞文化部編集委員。芸能担当として長らく、歌舞伎、文楽、能など日本の古典芸能を担当。舞台と役者をこよなく愛し、休みの日も刺激的な舞台を求めて劇場通いをしている。紙面では劇評、俳優のインタビューなどを掲載。朝刊文化面(大阪本社発行版、第3木曜日)で、当コラムと連動させた役者インタビュー「平成の名人」を連載。



「伊達の十役」で40回を超える早替わりを見せる市川染五郎
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