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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2014.05.15,Thu

 乱歩生誕百二十年の年もそろそろ、とかなんとかいいながらおとといのこと、ちょっとした用事がありましたので、ひさしぶりで名張のまちに足を運びました。

 ちなみに、私は名張のまちの生まれなのですが、いまは名張のまちに住んでおらず、あのすっかりさびれきった名張のまちには、最近ではあまり用事もありません。

 で、お会いした名張のまちのひとから、名張市は乱歩生誕百二十年でなにもせんのか、とのお尋ねをいただきました。

 いまのところ、なにも予定はないのではないか、しかし、いまのところない、ということは、もうずーっとなにもない、2014年度が終わるまできれいになにもない、ということになるのではないか、とお答えしておきました。

 ほんと、なんにも、ないんだもん。

 しいていえば、これはまだくわしい日程も決まっていない未公開情報なんですけど、今年の10月、名張のまちにある名張公民館を会場に乱歩をテーマにした市民講座みたいなのが開催され、僭越ながら私が講師をあいつとめることになっているのですが、それをのぞけば、乱歩生誕百二十年だからといって、とくになんにもないのではないか、とお答えするしかないわびしさ、はかなさ、なさけなさ。

 ま、いたしかたありません。

 いっぽう、乱歩生誕百二十年を記念して『奇譚』の活字化を実現するべく創刊準備を進めている「伊賀一筆」の件ですが、ついでだから名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック3『江戸川乱歩著書目録』の増補もやっとくか、と思いついて検討中、ということは先日も記したとおりです。

 むろん、著書目録の増補なんてのは、どう考えたって名張市立図書館がやんなきゃなんないお仕事ではあるんですけど、無理無理とても無理、ということは「伊賀一筆」第一号の手記「新・僕の図書館戦争」に縷々つづることにしておりますのでここまでとして、著書目録の増補もそうなんですけど、ついでだから、とか、この際だから、とか、そういった感じでついついページ数が増えそうになってくるのが困りものです。

 本日は、その一例を。

 大正14年の「D坂の殺人事件」で、明智小五郎がこんなことをいってました。

 「君はポオの『ル・モルグ』やルルーの『黄色の部屋』などの材料になった、あのパリーの Rose Delacourt 事件を知っているでしょう。百年以上たった今日でも、まだ謎として残っているあのふしぎな殺人事件を。僕はあれを思出したのですよ。今度の事件も犯人の立去った跡のない所は、どうやら、あれに似ているではありませんか」

 昭和31年、『探偵小説の「謎」』に書き下ろされた「密室トリック」には、こんな記述があります。

 探偵小説史で、この密室の「不可能」を最も早く主題とした作品はポーの「モルグ街の殺人」であるが、このポーの作品や、ずっと後に出たルルウの「黄色の部屋」にテーマとして示唆を与えた実際の事件があった。私は今から四十余年前、一九一三年十二月号の「ストランド・マガジン」に、ジョージ・シムズがそれを書いているのを読み、いまもノートに貼りつけてある。

 乱歩はこのあと、「Rose Delacourt」を「Bose Delacourt」と誤記するケアレスミスも犯しつつ、というより、これは誤植の校正漏れか、とにかくジョージ・シムズの文章を要約しているのですが、乱歩が「いまもノートに貼りつけてある」としているのが、『奇譚』にスクラップされた「The Strand Magazine」の切り抜きにほかなりません。

 私は当初、というのは、地域雑誌「伊賀百筆」に「奇譚(抄)」を掲載してもらおうと考えていたころのことですが、できるだけ誌面を節約したかったものですから、この切り抜きのことは脚注に、スクラップがありま〜す、とあたかもSTAP細胞のごとき軽さで簡略に説明を加えておけばいいだろうと考えていたのですが、「伊賀一筆」を出すことになってから考え直し、もうついでだから、なにしろこの際だから、これを機会にこの記事の全文を「奇譚(抄)」に収録しておくべきだろうと判断して、『奇譚』に貼りつけられたスクラップ、拡大コピーと首っ引きでテキスト入力し、しかるべき位置に追加で挿入する挙に出てしまいました。

 するってえと、この記事だけでほぼ二ページを消費することになり、それはまあいいんですけど、そうなると挿入したあとのページでは見出しや脚注がずるずるずるずるずれまくってくるわけで、それを修正する作業が必要になってきます。

 なんか、面倒だぞほんとに。

 しかし、明智小五郎が言及していた Rose Delacourt 事件、君は知っているでしょう、と尋ねられても、ほとんどの読者が知らんがなそんなもんと答えるしかなかった密室殺人事件の全容が、「伊賀一筆」第一号でついに明らかにされるという寸法です。

 もっとも、事件の概要は光文社文庫版乱歩全集『屋根裏の散歩者』の注釈に平山雄一さんがお書きになってますから、それでこと足りるといえばこと足りるわけで、こんなことする必要があるのかな、と思わないでもないんですけど、とにかくまあ、どうぞご期待ください、と書いときます、
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